永遠色グラフィティ

できるかな(3) ページ19

「あれ・・」

歯を磨いているうちに目が覚めて来たのか、

鏡の中の自分を見つめる慶ちゃん。



「なんか俺、変じゃない？」


「え？」


変だよもちろん。

そう思ったけれど、とりあえず次の言葉を待つ。


「なんか、」


目の間をぎゅっと指でつまみ、苦しそうに目を瞑った。


「どうしたの？」


「え、何が？もう寝る」


「何がって・・」


ますます慶ちゃんがわからなくなる。


でも、朝になれば。

全てが元に戻るかも知れない。


そう期待してベッドに入った。



「慶ちゃん」

さっきから目を押さえている慶ちゃんの手をとって

上から覗き込む。


「なに？」


その問いに応えるように唇を重ねると、


「お前・・」


ほんの一瞬で肩をはがされ、

今度は俺がベッドに押し付けられる。


見上げる慶ちゃんは

今まで見た事のない表情で。


怖いというよりかっこいい・・。



「何してんの？」


「・・しちゃ悪い？」


「悪い。

お前にそんな権利ないから」


「なんで、」


「お前は俺に従ってれば良いの」


「慶ちゃ・・」


あまりの豹変ぶりに言葉が出ない。


腕の力を抜くと、

目を瞑りもせず

慶ちゃんが唇に噛み付いた。


「痛っ」

思わず顔をしかめると、


「黙れ」


そう言った慶ちゃんのその後の行動は・・

多分誰にも言えない。


と言うより言いたくない。


だけど、

慶ちゃんがずっとこのままでも良い。


そう思ったことだけは、

教えてあげる。




ーーーーーーー



翌朝。


目を覚ますと既に、

台所から良い匂いが漂って来た。



「慶ちゃん、おはよう」


「遅ぇよ」


「えっと・・ごめんなさい」


少し改心した俺は素直に謝った。



「飯食う？」


「うん！」


テーブルに並んだ白いご飯と味噌汁、

卵焼きに・・・。


あ、鯖だ！


「慶ちゃん、鯖焼いてくれたの？」


朝から鯖が食べられるとは、

しかも慶ちゃんが焼いてくれたとは。


俺はすっかり感激していた。



「ああ、シゲが釣ったらしい」


味噌汁をすすりながら言う。


「えっ、シゲ？

シゲ来たの？」


「来たよ」


「起こしてくれれば良かったのに」


「お前来てるなんて言えないし」


「え、それどういう意味？」


「は？」


「シゲに言ってないの？」


俺たちが付き合ってること。


「言うわけないだろ。

だって男同士だよ？気持ち悪い。

俺、シゲに軽蔑されたくないし」



そんな風に思ってるなんて。


思わず涙がこぼれた。




(つづく)

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