僕の誕生日＜NEWS編＞

溺れてみなよ、この恋に(1)　＜加藤シゲアキ 7.11＞ ページ46

「いやいやいやいや！」


「なんでよ！」


「もうさぁ、良いって！そういうのほんと、」


「またまた、ほんとはしたいくせに」


「だっ、誰がだ、よっ！」

シゲを壁まで追い詰めると、バランスを崩しながらも両手で俺の胸を押す。

ポスン、て音がしそうな、可愛い拒絶。


拒否されているのは分かってるんだけど、

ちょっとほっぺたを赤くしたシゲが可愛くて

それ以上何も言えない俺・・。


俺の告白を受け入れてくれたことに有頂天になっていた、

ほんのふた月前の自分はつくづく幸せな奴だったと、今は思う。


だってシゲってば、

キスはおろか手をつなぐことさえ赦してくれないんだもん。


ひどくない？

こんなの、耐えられる男いる？


このさ、毎分毎秒持て余し過ぎてる俺のシゲへの愛情。

どうにかして〜！！！



ーーーーーー



「じゃあさ、いつになったら良いの？」


俺が諦めたと思ったのか、

シゲはソファに座って本を読み始めた。


「飯作ってたんだった」

じっと俺を見て話をそらし、立ち上がる。


「ちょっとシゲ！」

追いかけて袖を掴むと、


「いつまでたっても飯できねーぞ？」

と、冷たい視線。


「いいもん」


「ほんとに？さっき腹鳴ってたじゃん」


「シゲを食べたくて鳴ってたの！」


「お前なぁ・・」


「なんだよ！なんで当たり前のこと言ってそんな顔されなきゃなんないの？！」

シゲの、俺への愛情を感じられる呆れ顔は好きだけど、

今はそうは思えないよ。


「恋人なんだから当たり前でしょ！？」


「恋人って・・」


「違うの？」

唇をキュッと結んで言いにくそうに口ごもる。


「俺は恋人だと思ってたんだけど」


だって、好きなんだって言ったら、

俺もって、言ってくれたじゃん。


ずっと一緒にいたいって言ったら、

俺も、って。


見つめても、シゲの表情はぼやけている。


好き過ぎると。


想い過ぎると。


真実が見えなくなるって

本当なんだね。


「っおい小山！待てって！」


涙が溢れそうで、慌てて部屋を出る。

後ろに聞こえたシゲの声。


友達に対する声にしか聞こえないよ。


恋をしてるのは俺だけなの？



ーーーーーー



『もしもし。小山、戻ってこいよ』


『小山？今どこにいんの？迎えに行くから、電話出てよ』


『いつまで意地はってんだよ。いい歳してさ、あっ！』

途中で切れた、みっつめの留守番電話。


何かあったのかと不安に思いながら、

丘を登った。




(つづく) →移行します。

この小説の続きへ→←君のせい(3)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す