僕の誕生日＜NEWS編＞

僕の宇宙は君だ(2) ページ41

どうしよう。

このままあいつの家に行ったとして、俺は何て言うんだろう。


考えながら歩いていると、ポツリと雨が落ちてきた。


やめろって言ってるように思えて。


お前があいつのところに行ったって、

受け入れられるわけがない。


だって考えてもみろよ。


妻と、生まれてもいない子供を捨てるような男だぞ？


そんな奴と、誰が一緒にいたいと思うよ？


万が一向こうも好意を持ってたとしても、そのこと聞いたら信頼揺らぐぞ。


そんな奴なら、一緒にいられないかもって、思うのが普通だろ。


そんな風にどんどん強くなる雨。



「小山？」


涙がこぼれ落ちる寸前、後ろで俺を呼ぶ声がして。


その声に涙が加速する。


「こんなとこで何してんの？」


だってここはあいつの家の近くで。


振り向かない俺の肩を、その手がやんわりと掴む。


「小山？」


「……っ」


「なっ…どうした？

何かあったのかよ」


いつだって心配してくれる君を、

俺が特別な存在だからだと勝手に解釈していたけれど。


もしかしたら違うのかも知れない。


だって君は今だって、冷静な表情を崩しはしない。


君が誰にでも親切で優しいってことに、

こんな時に気が付いて。


自分勝手に泣き崩れた。



ーーーーーー



「ほんと馬鹿」


嫌だと抵抗する俺をシゲは、引っ張るようにして家に連れ入れてくれた。


「…何がだよ…」


馬鹿なのは百も承知で。

けれど、思考は一向にまとまらない。


シゲは俺を優しい目で睨んだまま、ふっと笑った。


「Aさんと、なんかあった？」


「え…」


「何の荷物もないって事は、そういう事なんじゃないの？」


「あ…うん…」

やっぱりシゲにはバレてしまう。


でもまだ、言う勇気が出ない。


だって嫌われたくないんだ。


好きじゃなくても良いから、

せめて…。


「何言っても驚かないから、言ってみれば？」


「そんなこと、あるわけないよ」


「あるから！だって俺だよ？ほら、早く言ってみ」

履いていたズボンの腿の辺りを握る。


「Aとは、別れた…」


「は？」


「ほら、驚いたじゃん」

どうでも良いことを指摘して。

そうしてみたって気は紛れなくて。


「軽蔑、するよね…」

だんだんに、シゲと目を合わせていられなくなる。


「しないから。話して」

その声に俺はようやく、顔を上げてシゲを見た。


「…好き…なんだ…」


「主語がない」

いつものツッコミも、今はこんなにも怖い。



(つづく)

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