僕の誕生日＜NEWS編＞

君と見た空(3) ページ34

7月11日。


外は雨。

私の心も雨。


きっと時間が解決してくれる。そう思うことに決めた。


それなのに。


”島への定期船乗客、昨晩から行方不明”

朝何気なく観たニュース。


私の住む島への定期船のことが流れて目を向けると、

一瞬成亮の名前が画面に映った気がして胸がざわつく。


嘘。

気のせいだよね。

そんな訳ないよね。


煩い心臓を押さえて携帯を握ると、その瞬間に着信音。


その発信者に、ボタンを押すことが途端に怖くなる。


「・・はい」

なんとか出たものの、その後の言葉が出て来ない。


「Aちゃん？俺手越だけど！」

その声に、大丈夫だ、と少しだけ思う。


「何かあったんですか？」


「テレビ観てない？シゲがさ！」


「もしかして」


「あ、やっぱり観た？もう着いてると思うんだけど、」


「え？着くってどこに？」


「ん？あれ？あ、ごめん！俺もう行かなくちゃ！

Aちゃんさ、港まで迎えに行ってやってくれる？じゃあね！」

ちっとも切羽詰まった様子のない手越くんの声にほっとしながらも、頭の中にハテナが浮かぶ。


そして私はサンダルをつっかけていた。

ーーーーー

知り合いからの目撃情報を頼りに船に乗って島へ出掛けた俺は、

天候悪化で救助ボートに乗り換えるハメになり。


一人で乗ったそのボートは、俺の頼りない操縦技術により

沖へ沖へと流されていた。

島に小説の取材に行くなんて言って、テレビのインタビューまで流してもらったのに。


「やべー。もう夜空けちゃったよ・・」

なんとか転覆は免れたものの、ここがどこなのか皆目見当もつかない。

Aに会うどころか、生きて帰れるかもわかんないってゆー・・。


夜中荒れていた海は驚く程に凪いでいた。


疲れ果てて船に横たわり、目を閉じて深呼吸をする。


俺今日誕生日なんすけど。きっと今日の占い最下位だぞ蟹座。

どこかの神様を恨んでいると、遠くから何かが聞こえてきた。


「・・きぃー・・っ」

それは動物の鳴き声ではなく、人が何かを呼んでいるような。

耳をすますと、次第にはっきりする声。


「成亮っ」

立ち上がると砂浜がもうすぐそこに見えていて。

懐かしい人が、泣きそうな顔して立っていた。


「ばかっ！何やってんのっ！？」

泣きながら肩をグーで叩く。


その痛みに。神様への恨みを撤回する。


「ばーか。Aこそ、こんなとこで何やってんの」


泣きながら笑う君と俺。

その笑顔ずっと、俺に見せてよ。





fin.

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