僕の誕生日＜NEWS編＞

さくらガールと誕生日(３)　 ページ3

AM１１：２０


超特急で羽田まで移動して

これまた超特急で函館空港に降り立ち、

携帯の電源を入れる。




Aちゃん、ちゃんと電話出てくれるかな。


出ないと俺の苦労が水の泡・・


そう思いながら電話を耳にあてた。




「もしもし？」


「あっ、Aちゃん？

加藤です！」



思わず名字で名乗ってしまう。



すると電話の向こうでAちゃんがクスッと笑い、


「シゲくん？

こんにちは！お久しぶり〜」


明るく言った。



「あ、うん、久しぶり。

あのね、ちょっと俺用があって函館にいるんだけど、

小山からAちゃんにお使い頼まれてて。

今日、この後時間あるかな？」


結構時間のかかるこの作戦。

時間がないと言われたらもうアウトなんだよね・・。



「慶ちゃんから？なんだろ。

今日はお昼で上がれると思うんだけど・・」



少し沈んだ声を不思議に思いながらも


俺はひと安心。



「ほんと！良かった。

じゃあ俺、車で迎えに行くよ」


職場の住所を聞き、その足でレンタカー屋に走った。




「Aちゃん、お疲れさま！」

時間ぴったりに車を乗り付けると、

Aちゃんが出て来た。



「シゲくん、わざわざありがとう。

随分大きな車だね〜」


驚くAちゃんを助手席に乗せ、



「ごめんね、本当は小山本人が来られたら良かったんだけど、

あいつ今日も仕事で」


「ううん、かえって気を使わせちゃってごめんね。

わかってるから、いいのに・・」



膝の上のバッグを握りしめながら言うAちゃんは、

小山の言うようにいつもの元気がないし

疲れているみたいだ。



「Aちゃん、最近忙しいの？」


「うん、ちょっとね。

NEWSも忙しくなりそうだね」


目を合わせず外を見つめるAちゃん。


目的地に向かう間ずっと、

Aちゃんは外を流れる景色を見つめていた。



「あのね、」

長い沈黙のあと。



「私、転勤になりそうなんだ」


「えっ」


そんな大事な事・・


「小山に言ったの？」


「ううん、まだ」


そう呟くと、もう話すことはないと言うように

Aちゃんは下を向いた。




(つづく)

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