僕の誕生日＜NEWS編＞

終わらない夏(5) ページ17

いつまでもはっきりしない私に嫌気がさしたのか

成亮は翌日日本へ帰って行った。



「誕生日、祝いたかったのにな」

飾り付けた自室でぼんやりしていると、携帯が鳴る。


画面には”小山くん”の文字。私が送ったメールの返事だ。


それを読んで私は、少しの荷物を持って部屋を出た。


ーーーーーーー


「加藤くん、お誕生日でーす！」

歌番組のリハーサル中に誕生日を迎えたシゲ。


みんなに祝われて嬉しそう。


本当は俺の物にしたいんだけど、シゲの幸せの為だ。


「この後家来てね」

耳打ちすると、シゲは眠そうに頷いた。


ーーーーーーー


「おじゃましまーー」


シゲとその他二人を引き連れて家に帰ると、

部屋の中から良い匂いが漂って来た。



「誰かいんの？」

シゲが怪訝そうに部屋を覗く。

家に人がいたことなんて今まで一度もないからね。


「そりゃいるでしょ！何の日だと思ってんの？」

手越が後ろからシゲを部屋に押し込んだ。



「わっ、お前やめろっ・・、っA・・」

綺麗に飾り付けられた部屋の真ん中に、

シゲを見つめるAちゃんが立っていた。


「え、なんで？」

「シゲの誕生日、祝いたかったから」

驚くシゲに、俯いたAちゃんが消えそうな声で言う。


「知ってたの？俺の誕生日」


「知ってる。私・・」


「シゲ、Aちゃんあっちでも準備してたんだよ。

それなのにシゲが帰っちゃうから」

俺が口を挟むと、


「いやあれは！仕事だって言ったじゃん！

それにまた来るからって・・」

大声で言い訳を始めるシゲ。


「でも、訂正してくれなかった」


「え？何を？」


「誰よりも大切に思ってるなんて嘘だって言った時、

悲しそうに私のこと見て、そのまま・・。だから私、」


「それは、寂しかったから・・

信じてもらえない自分を変えなきゃって思ったんだよ。

それに、Aは俺の言葉なんて信じないでしょ？


俺の行動を見て欲しかったんだよ。

ちゃんと自分の仕事して、

Aのこと受け止める準備してるってこと、

わかってもらいたかった。」


突っ立ったままのシゲの背中を、まっすーがポンと押す。


その勢いでAちゃんを抱きしめると、

腕は背中に回したまま、シゲは俺たちを振り返る。


わりぃ、という顔をしながら

あっちに行けと顎で指示される。

俺たちはすごすごと寝室に引き下がった。


「A、俺の側にいてくれる？」

ドアの向こうで、シゲの優しい声がした。





fin.

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