僕の誕生日＜NEWS編＞

終わらない夏(1)　＜加藤シゲアキ 7.11＞ ページ13

ライブが決まらない。

次の仕事が決まらない。


ただひとつ決まっているのは

俺の誕生日翌日に開催される歌の特番だけだ。


元々多趣味で、「暇！」と思う暇さえない俺だけど、

舞台と新曲発表を終えたこの夏を持て余していた。



ライブしてーなぁ・・。



台風の影響で雨の止まない七夕の朝。


朝食を食べ終わり休日をどう過ごそうかと

ソファに寝転んでぼんやり考えていると、

ある事を思い出した。


あ、今日七夕じゃん。

こんな雨降りじゃあ織り姫と彦星は再会できてないだろうな・・。


って、あっっ！！


壁のカレンダーは、

思った通り”2014年”を掲げている。



今年じゃん。

てか今日じゃん。


やばい、行かなきゃ。



珍しく俊敏に立ち上がった俺は、

小さなスーツケースを取り出して服を何枚か押し込み

大急ぎで家を出る。


鍵を閉めたところで気が付く。


あ、パスポート。



ドタバタと部屋に戻り

引き出しにしまい込んでいたそれを

いつも持っているショルダーバッグに入れ、

今度こそ家を出る。


JRの方が早いな。

タクシーを呼ぶのを思いとどまり

俺は駅へ走った。



ーーーーーーー



「あ、もしもし小山？」

無事空港に着きチケットを手配できたので、

一応知らせておくかと小山に電話する。



「あーシゲちゃん？どったの？」

もうテレビ局にいる様子の小山が、のんびりした口調で出た。



「俺これからトルコ行ってくっから。なんかあったらヨロシクー」


「は？トルコ？何それ？！俺置いてくの？！」


「なんで俺がお前を連れて行かなきゃなんねーんだよ」

不服そうな小山に笑って答えると、



「あっ、あれか！！」


「そう、さっき思い出したの」

目的がわかったらしく、


「ちょっと、それも酷いな」


「ですよねー・・・・。

あんなに名残惜しかったのに、俺もホトホト呆れた男ですよ。

日々に追われてね」


「今度はちゃんと連れて帰っておいでよ」

急に年上風を吹かせて小山が言う。


「そうね、ちゃんと来てたらね」


「来てるって」


「そうかな」


「Aちゃん、シゲのことかなり気に入ってたと思うよ」


「なんでそう思うの？」

半信半疑な俺が問うと、意地悪な小山が言う。


「さぁね〜。それは自分で確かめて来なよ。

お土産はシゲとAちゃんの笑顔で良いからさ！」


「はいはい。じゃ、エブリ頑張って」

小山の軽口に少しだけ気持ちも軽くなり、

俺はゲートに歩を急がせた。




(つづく)

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