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一瞬のぬくもり(3) ページ44

タクシーで病院に手越を担ぎ込む。


いつも俺たちが世話になっている


小さな個人病院。




すぐに検査が行われ、


頭の傷の縫合手術を受けた手越。



やっと個室のベッドに落ち着いた頃には


空は明らみ始めていた。





なんでこんなことになったんだろう。


時折苦しそうに顔を歪める手越を見ながら、


俺はどす黒く渦巻く気持ちを抑えこもうと


必死で藻掻いていた。



握った拳が震えて仕方ない。



手越をこんな目に合わせるなんて。


絶対に許さない。


殺してやる。


泣きそうになって顔を上げると


手越がふと目を覚ました。




「シゲ・・・」


辺りを見回して俺を認め、


ほっとしたように手越が口を開いた。




「手越・・・」


言葉を続けられない。



「シゲ、ごめんね。俺・・・」


「謝ることなんてない。悪いのは・・」


「シゲ、顔が・・」


「え?」


「怖いよ」



力なく微笑む瞳が潤んで見えて、


咄嗟に手越のおでこに触れていた。




「シゲ・・?」


「許せ・・ない。

お前にこんな・・っ・・」




気付けば零れていた涙。


包帯を巻いた頭をそっと撫でる。



「シゲ、泣かないで・・。

俺なんかのために、涙使っちゃ、もったいないよ」



手越に掴まれた手は、


どうすれば良いのか途方に暮れているようだった。




「なんでだよ」


「だって、シゲの涙は、嬉しい時に流すのが似合ってる。

その時までとっておかなきゃ。

ね?」


「んなの俺の勝手だろ?俺は今泣きたいんだよ」




手越らしくない言葉に胸が詰まって、


涙が止めどなく溢れ出す。




俺が涙を流すのは、手越のためだけだよ。


嬉しい時も、悲しい時も、


俺の涙は手越のためにあるのに。




ぬぐってもぬぐっても。


俺は泣くのをやめられなかった。





「・・んで・・」


「ん?」


泣き止むのを諦めて話し始める。




「なんであんなこと・・されたの?」


頭だけじゃなく、全身が痛々しく傷つけられていた。




「あの人、俺のこと、恨んでたみたい」


「なんで」


「二人がNEWSを抜けてから、

客が減ったんだってさ。

そんなの、知ったこっちゃないよねぇ〜。

俺のせいじゃ・・ないよ・・ね・・?」



言ってることと本当の気持ちがバラバラで、


大きな瞳は大粒の涙を湛えていた。



「手越のせいなわけ・・ないだろ?」


「うん・・そう、だよね・・」


悲しく震える唇を、


どうにか俺は慰めたかった。




(つづく)

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設定タグ:NEWS , 小山慶一郎、加藤シゲアキ , 増田貴久、手越祐也   
作品ジャンル:恋愛
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大福もちこ(プロフ) - クラハさん» おや、そうでしたか^_−☆笑 短編集だから内容は今と変わらないんですけどね。新・さくら並木〜でイイかな〜。考えるの楽しいですよね題名も☆ (2014年5月15日 23時) (レス) id: 0618d2993c (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - 美江にゃん□?さん» いいえ〜こちらこそリクありがとうございました♪楽しんで貰えたなら嬉しいです☆嬉しいな〜頑張りますよん! (2014年5月15日 23時) (レス) id: 0618d2993c (このIDを非表示/違反報告)
クラハ(プロフ) - いや、クラハも本来そっち系…(笑)内容わかればタイトル考えてあげたいところだけど…タイトルは、クラハもセンスなし(;^_^A (2014年5月15日 22時) (レス) id: 3632dde973 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - クラハさん» あっクラハさん!読みに来て下さっていたのですね\(//∇//)\やたー!次の題名、悩み中です。女の子との恋愛よりこっちのが筆が進むのが悩みどす。爆 (2014年5月15日 22時) (レス) id: 0618d2993c (このIDを非表示/違反報告)
クラハ(プロフ) - ベストカップル最高(笑)いや、面白かった♪←実はちゃんと読みに来ていたクラハでした (2014年5月15日 9時) (レス) id: 3632dde973 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kim sora | 作成日時:2014年3月16日 22時

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