続・さくら並木のセレナーデ

コヤマスのヤキモチ(4) ページ27

置いてけぼりにされた俺が

スタジオに戻ると、

既に撮影を始めているまっすー。


早っ！


珍しく俊敏な増田さんに驚き

一人スタジオの隅に移動して見ていると、


「機嫌、直ったみたいね」

笑いながらシゲが寄って来た。


「うん、まあね」

なんだかすっきりしなくて戸惑う。



すると手越もやって来て、こう言った。



「慶ちゃん、わかってる？」


「何が？」


「まっすーのヤキモチは

慶ちゃんなんかのより、

ずっとずーーーっっと激しいってこと！」



そうかなぁ、と思っていると、



「こらそこぉーーーーっっっ！！！」


遠くから怒声が聞こえて来た。




「そら来たっ！」


手越とシゲが肩をすくめて逃げて行く。




「ちょっと！どこ行くんだよ！」と

手を伸ばすけど、

それを遮るように

背後から伸びる黒い影。



「小山、くん？」

至極冷静なその声に振り向く。



肩を掴まれ促され、


「はい、ここに座って」


休憩に行ったカメラマンの席に座らされた。


「えっ、なんで？まだ話が、」


立ち上がろうとすると、



「だめっ！」


ほっぺたをぷくっとふくらませるまっすー。



そしてまた椅子に押し付けられ、

耳元で囁かれる。



「もう、俺以外の男と喋るの禁止」


「は？そんなの無理・・」


「無理？俺のお願いでも？」


「・・・」


そこからはもう、

いつもの増田さんの独壇場・・。



「・・わかりました。

努力します」



とりあえずそう言うと、


「あ、今とりあえず言った」



非難する瞳。


はぁー、お見通しか。


どう言えば許されるのか考えあぐねていると、



「じゃ、喋った日はお仕置きだから」


「は、はぁ・・」


さも妥協案のように放った言葉のおかしさに

この人は気付いていないのだろうか。



肩に置かれた手がやけに重たい。



「お仕置きって増田さ・・」


「は〜い！撮影再開しま〜す！」


戻って来たカメラマンに指示され、

まっすーはまた

カメラの前にスタンバイした。




(つづく)

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