say goodbye２ (ページ9)

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__Masuda side. ページ9

家に帰ってベランダに出て、しばらく月を眺めてた。
暗くなった街を照らす月が恨めしくて。
睨んでいた。

「…こんなもの」

十字架のアクセサリーを月に掲げる、一瞬投げ捨ててやろうかと思ったけどやめた。
徐々に風が冷たくなってくる。
身体も冷えてくる。
湯は溜めてある。
どうせなら思いっきり冷やして、一気に温まりたい。
…心臓が驚かないくらいに。

「ヴァンパイアらしく生きれるほど簡単じゃない」

不意にシゲの歌を口ずさむ。
あの歌は、シゲが何を思って作ったんだろう。
単にヴァンパイアが好きなだけだったのか。
知っても意味はないけど。

「夜よ覚めないでくれ～…」

何故か今は歌いたい気分だった。
歌って気を紛らわしたかった。
この孤独な気持ちを。
まるで罪を背負ったような気持ちを。
十字架を握りしめる。
視界がボヤける。

「…風呂入ろ」

溢れる気持ちを無理やり抑えるべく、俺は浴室へと向かった。