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私のアパートの近くにある、
小さな公園。
そこが、デートの待ち合わせ場所だった。
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夕方になると、
子どもたちの声で賑わうそこも、
朝10時は、人気がない。
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そこに行くまでに、
犬を散歩させている人と
すれ違いはしたけれど。
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そんな、
とっても静かな休日の朝。
周りに不釣り合いなほどの、
黒い車。
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ぴかぴかに磨かれていて、
車に全く詳しくない私でも、
高級車だと分かる。
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あと、分かるのは
ハンドルは右側だから
国産車だってことくらい。
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そっと、
車に近づく。
運転席には、櫻井さんの姿。
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うつむいて、
端末を指先で弄っている表情は、
長い睫毛が影を落として、
泣きたいくらい、綺麗だった。
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コンコン、と2回
窓ガラスをノックする。
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ふ、と顔をあげて、
大きな瞳が私を捉える。
そのあとすぐに、目じりを下げて、
ふわり、と笑った。
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ジーンズにネイビーのジャケットを合わせた彼が、
当たり前のように車から降りてきて、
おはよう、と笑った。
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「こんにちは、」
「はは、そっか。もうお昼だもんね、」
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櫻井さんは、
嫌な顔を見せずに、
私の返事に笑いながら扉を開けてくれた。
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私がしっかり乗り込んだのを見た後に、
音がしないように、
静かに閉められる扉。
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フロントガラスから見える、
櫻井さんの姿を追っていたら、
運転席に乗り込んだ櫻井さんと目が合って笑われた。
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「ふふ・・・なに？」
「・・・」
「こら、黙ってるとキスするよ(笑)？」
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眉を下げて櫻井さんが笑う。
あまりに冗談を言うように言葉を紡ぐものだから、
私も楽しくなって
両手で唇を隠す仕草をして見せたら、
彼はとっても楽しそうに笑った。
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