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私がこの話をするたび、
仁は、「愛されてたんだな」と言って笑う。
私はいつも「そうかもね、」と言う。
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母はきっと、私のことを愛していた。
だけどそれ以上に、
隣にはいない私の父親のことを愛していた。
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私の成長を喜んでるなんて、本気でそう思ってるの？
だったらどうして、今その人はここにいないの？
私のせいで、ママはパパと離れなきゃいけなかったのに？
私がいなければ、今頃ずっと、その人の隣で笑っていられたんじゃないの？
どうして産んだの？
どうして私を選んだの？
私はパパに会いたいなんて、これっぽっちも思ったことないけど、
ママが私を見てパパを思い出すなんてそんなのあんまりじゃないの？
全部教えてくれないなら、ずっと黙っててよ。
私泣きたくて仕方ないよ。
私を通して・・・知らない男の人を見ないで。
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全部、まだ幼い頃に思ったことだ。
「どうして私には父親がいないんだろう」
もっと、もっと幼い頃に生まれた疑問。
まだ、純粋だった。
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「お母さんどうしてるんだろ、」
「・・・」
「会えないけどさ、」
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仁が、
ビールを無言でビールを煽った後、
今年も？と小さな声で聞いてきた。
うん、今年も。
私は笑う。
母が、そうしていたみたいに。
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墓参りくらい行ったら？
と言われて
そのうちにね、と返す。
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「あんましょげてると、いいことねーぞ」
「誕生日くらいいいじゃん、」
「誕生日はもっと喜ぶ日、」
「・・・うん、」
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そうだね、と言って笑う。
仁は私の顔を見て、ふ、と息を吐いた後
屈託のない笑顔を見せた。
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