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「はい、誕生日おめでとう、」
「ああ、どうもありがとうございます、」
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いつもの居酒屋。
仁と向かい合って、私の誕生日のお祝い。
深々とお辞儀をしてお礼の言葉を返す。
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誕生日のお祝い、なんて言ったって、
所詮大学生がすることだ、
何か豪華な食事が出てくるわけじゃない。
ただ、誕生日があまり好きではない私を知っていて、
私が寂しくないように、仁がついていてくれるだけの話。
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「まじでお前俺しか友達いねーのかよ、」
「そっくりそのまま、仁に返す、」
「うるせーうるせー」
「それもそのまま返す、」
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注文した料理を
2人でつつきながら、
いつものような、何も変わらないやり取り。
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楽しそうに笑っている仁を見て、
嬉しくなる。
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「誕生日なんて、」
「・・・」
「泣きたいだけだったな、」
「・・・」
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私の誕生日。
母は、必ず私のことを抱きしめて笑った。
とても優しい笑顔で。
A、と私の名前を呼んで、
愛しそうに私の頭を撫でた。
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泣きたかった。
声を出して大きな声で。
だけど、できなかった。
母が、私をどれだけ大切にしてくれていたかなんて、
今なら分かる、分かってしまう。
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けれど、
あの頃の私にだって、
分かってることもあって。
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「私が、いなければなあ、って」
「・・・」
「全部、私のせいなのになあ、って」
「・・・」
「ふふ、懐かしい、」
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母にとって、私は宝物だった。
愛した男との間にできた、
とても大切な宝物。
私が一つ、大きくなるたび、
母は笑った、私の名前を呼んで嬉しそうに笑った。
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＿パパもきっと喜んでる＿
傍にはいない、
愛した男を思って笑う母は、
いつも、とても綺麗だった。
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