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「お疲れさま、」
「あ・・・、こんばんは、」
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あれ、今日は来れないって言ってたのに。
バイトが始まる前の
ラインのやり取りを思い出して、
思わず首をかしげる。
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「早く終わったから、」
「・・・」
「あ、ホントに仕事してんの？って思ったでしょ、」
「・・・ちょっとだけ？」
「はは！思ってた(笑)！」
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嘘です、そんなこと思ってないです、
と笑うと
櫻井さんも楽しそうに笑って、
当たり前のように私の手を迎えに来てくれる。
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ぎゅ、と握って
2人で歩く。
冷たい風に、うぅ、と声を上げると
寒い？と聞いて
ぴったりと私に寄り添ってくれた。
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「土曜日バイトは休めそう？」
「あ・・・はい、バツ付けてきました、」
「うん、」
「そしたらすぐ、大野さんにバレた、」
「あはは、そっか」
「デートでしょ？って。」
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む、と唇を尖らせていると、
櫻井さんが頭上で笑って、
「そうです、って言った？」
と聞いてきた。
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「えっと・・・、」
「・・・」
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言ったかなあ。
記憶を呼び起こしていると
櫻井さんが、少し低い声で
「ちゃんと言っといてね、」
と言って、ぎゅ、と手を握った。
*
「ここで大丈夫？」
「はい、」
「気を付けてね、」
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櫻井さんは、なかなかに過保護だ。
私と櫻井さんの家は反対方向にあるから、
そもそも乗る電車が違う。
私と同じ電車に乗ると、櫻井さんは帰り着くのに
倍の時間がかかるから、
大抵改札の前でサヨナラだ。
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「帰り着いたら、ライ・・・」
「ちゃんと、ラインします、」
「・・・はは、俺ちょっと過保護(笑)？」
「ふふ、」
「ま、いっか。許して？」
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落ち着いた声で、だけど
とても無邪気な笑顔で笑って、
ぽん、と私の頭を撫でた後
そのまま顔を傾けて優しく唇が触れた。
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「あ・・・」
「おやすみ、」
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そういって、
私が改札の方に行くように
ポン、と肩を押される。
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改札をくぐって振り向く。
ちゃんと、私を見てくれている櫻井さんが、
一瞬きょとん、として手を振ってくれた。
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＿おやすみなさい＿
そう口を動かして頭を下げると、
＿おやすみ＿
優しい笑顔で、返された。
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