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ああ、そうだ。
あの人だ。
.
仁と、ケーキ屋さんに行ったときに、
ばったり会った、その人だ。
.
＿二宮さん＿
彼は、櫻井さんの後ろにいる私を見るなり、
一瞬目を見開いたけれど、
そのあとすぐに人懐っこい笑顔で会釈をくれた。
.
「こんばんは、」
「・・・こんばん、は」
「翔さん、連絡ずっと待ってたからさ。
ふふ、手ぇ繋いで来たの(笑)？大事にされてんね？」
.
軽い口調で、そう揶揄われて。
返事に困ってると、櫻井さんは慣れたように
「ニノ、困らせんなよ、」と笑った。
.
「この前、会ったよね？」
「・・・はい、」
「仁と一緒にいた・・・ってことは、大学生？」
「はい、」
「そっか。翔さん、わかい娘(コ)捕まえたね(笑)？」
「っふ(笑)」
「あー、笑ってる。やらしー、」
.
仁が、二宮さんは、36歳だと言っていた。
同い年・・・ということは、
きっと、仲良しなんだろう。
.
私と一緒にいるときは、大人に見えた櫻井さんが、
今日は随分と幼く見えた。
.
二宮さんは、優しかった。
人懐っこい柔らかい笑みは、
緊張した心を溶かしてくれたし、
何より、隣には櫻井さんがいてくれた。
.
だからきっと、いつもなら気づくことに
気づかなかったんだと思う。
.
「あぁ・・・ごめん。ちょっと電話、」
.
そういって、櫻井さんが席を外した直後。
すっ、と笑みを崩した二宮さんに。
大人なんて、信じられない、ってことに
今更、気が付いたのは、私の落ち度だ。
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