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広くて長い廊下を進めば、
あかりが自動で灯って、
その先にある扉を開いたら、
部屋の奥は、一面硝子張りのリビングだった。
.
東京の夜景が一望できるそこからは、
小さいながらも、赤く光った東京タワーが見えて、
当たり前だけれど、櫻井さんは、
慣れた手つきで、リビングの電気をつけた。
.
「そこ、座って。」
.
黒い革張りのL字のソファーは、
そこで、眠るには、事足りるほどで。
.
持っていたカバンを床に置いて、
そっと、そこに腰掛ける。
私の前に置かれた、縦に長細いグラスに注がれたオレンジの液体は、
私が、まだ、子供だからだ。
.
白いカップに入った茶色い液体に口をつけながら、
櫻井さんが、私の隣に腰掛ける。
.
「ごめんね？紅茶なかった・・・」
「・・・はい、」
.
だけど、私がコーヒーが苦手なことを
櫻井さんが知ってくれているなら、
それだけで心が震える。
.
「・・・」
「・・・・・・」
「っあの、」
.
ああ、これは。
私なんだろうか。
.
誰か一人に執着して、
その人に、嫌われたくないと思う私は、
本当の、私なんだろうか。
.
「・・・ごめんなさい、」
.
だんだんと小さくなっていく声。
震える指先。
.
こんなの。
＿私が知ってる、私じゃないのに。
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