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「ニノ、俺今日は・・・っえ、」
「明日ぐらい仕事休めよ、」
.
二宮さんは、すぐに立ち上がって、
その場に立ち尽くしいる櫻井さんの肩をぽん、
と叩いたあと、一度も振り返らずに、出口へと向かった。
.
「A、ちゃ・・・ん」
「・・・」
「ごめん、またニノがなんか・・・っ」
「違う！」
「・・・え、」
「違い、ます、」
.
なんで。
そんなに、寂しそうな、悲しい瞳をして。
私のことを、一番に心配するの。
.
1か月で、心なしか線が薄くなったような櫻井さんは、
私の言葉に、困ったように眉を下げて笑った。
.
「・・・俺とはまだ。会わない方が、いい？」
「・・・っ、」
「そっち・・・行かない方が、いい？」
「っや、」
「触れない方が。・・・いい？」
.
質問のたびに、首を横に振れば、
どんどん、距離が近づいて。
最後のそれに、涙を溜めてふるふる、と首を横に振れば、
親指が、頬に触れる。
.
そっと、そっと、そっと。
怯えるように、確かめるように目じりに宛がわれた親指が。
瞬きをしたら零れそうな涙をぬぐった。
そして、櫻井さんは、やっぱり困ったように眉を下げて笑って。
.
「・・・帰ろうか、」
.
差し出された手は、
強引に私を引き寄せることなく、
ただ、待っている。
.
ゆっくりとそれに掌を重ねたら、
優しく、優しく。
包み込むように握られる。
.
こんなに、優しい大人がいるなんて。
＿私は今まで、知らずに生きてきた。
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