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「翔さんの、ことなんだけど、」
「・・・」
「考えてくれた？1か月、翔さんのこと、疎遠にして、」
.
疎遠って・・・そんな、言い方。
そうするような言葉を掛けたのは、
他でもない、この人なのに。
.
「私は、大人の人が嫌いです」
「・・・」
「自分本位で、自分勝手で、子どものことなんてこれっぽっちも考えてなくて。」
「・・・」
「その影響は何も言えない子どもが一心に受けるのに。
そんなことも、分かってない。」
「・・・」
「たった一言で傷つけて、それに気づかないで″子どもは宝だ″とか″大切だ″とか、
私は一生信じない、信じたくない。」
.
こんな、ひどい言葉、
この人が彼に伝えるなら、それまでだと思った。
.
「私は他の誰かに認めてもらうために、櫻井さんとお付き合いしてるんじゃありません。」
「・・・」
「櫻井さんが別れたいって言うなら別れます、だけど。
他人に何か言われたからって、別れたりしません。」
.
矢継ぎ早に話した言葉に、
目の前の二宮さんは、微動だにしなかった。
ただ、色素の薄い瞳で、射貫くように私のことを見つめる。
.
「・・・そこまで言えるのに、」
「・・・」
「なんで、翔さんの連絡無視するの？」
「・・・え、」
.
言われると思っていた言葉とは、
真逆の言葉が飛んできて、動揺した。
首を傾げながら、二宮さんが、口を開く。
.
「謝ろうと思って、」
「・・・え？」
「この前、真栄城さんに、俺が言った言葉。」
.
ふぅ、と小さく息をついて、
二宮さんは、頭を下げた。
.
子どもの、私に。
大切な幼馴染の、恋人の私に。
別れろと、つい1か月前言葉を掛けた、
大学生の、私に。
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