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バイト終わりの帰り道を歩く。
隣には、仁。
無言の帰り道は、相手が違うだけで、
居心地の悪いものになるらしい。
.
「ねえ、」
「んだよ、」
「なんか、喋って」
「お前そんな雑なフリあるか？！」
.
ワケわかんねぇな、お前
と、呆れた声を出しながら、
バイトであったドジ話を聞かせてくれる。
.
その話を黙って聞きながら、
駅までの道のりを、仁の隣で歩く。
車道側は仁。
何を言わなくても、いつも、隣。
.
「でさぁ…って、聞いてんのお前？」
「…聞いてない、」
「フザケンナ」
「仁、ありがとうね、」
「なにが、」
.
口悪く眉をひそめても、
私のバイトが終わるタイミングを見計らって
来てくれたこと。
.
そしてそれは、意図的にとしか思えない時間、
私との連絡手段が、絶たれていたからで。
心配して、迎えに来てくれたんだと、分かるから。
.
「携帯の電源はしばらく入れないから、コーヒー飲みに来てよ、」
「お前最低だな！」
「なんとでも言え！！」
.
楽しいんだ。
仁といると、
年上の大好きな恋人のために、一生懸命背伸びすることも。
何が正解なのか、ぐるぐる考えることも。
.
仁が聞いたら、「無駄だな、」って言いそうなこと、
全部…しなくていいから。
.
他人の気持ちに土足で踏み込むことが、
どういうことなのか分かっている彼は、
丁度いいところで立ち止まってくれるから。
ただただ、居心地がいい。
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