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駅が近づくにつれて、
足取りがどんどん遅くなる。
最終的に櫻井さんが私を引っ張る形になってしまって、
振り返って立ち止まってくれた。
.
「・・・Aちゃん？」
「・・・あ、はい、」
.
ちゃんと、歩きます。って笑って
歩みを進める。
もっと駅が遠ければいいのにね、なんて
そんな台詞ずるい。
.
きっと仁が見たら、
眉を顰(ひそ)める。
″お前、何やってんだ、″って、
きっと、そう怒られる。
.
たったこれだけの少しの時間で、
甘やかされることに慣れた私は、
色々なものが変わって行って、
だけど、まっすぐ立たなきゃ、と剥がれていったそれを、必死でかき集めている。
.
「あ・・・そうだ、」
「はい、」
「今度、友達に会ってほしいんだけど、」
「・・・え？」
「俺の、幼馴染の。」
.
不意にそんなことを言われて、
幸せだった気持ちに、影が落ちる。
幼馴染ってことは、きっと、櫻井さんと同じ歳くらいの人で。
.
それは即ち、私の嫌いな＿大人＿ということで。
.
「不安なら、無理強いしないよ、」
「・・・」
「でも、会いたいって、言ってるから、」
「・・・・・・」
「Aちゃん？」
.
名前を呼ばれたのと、行きます、と
つぶやいたのは、同時だったと思う。
私の小さな返事に、櫻井さんは優しく笑って。
ありがとう、と言った。
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