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「ごめんね？予定、あったんじゃない？」
.
次の日の朝、
指定通りにお店に行ったら、
もう、エプロンをつけた大野さんが、
にこにこ、と笑ってそう言った。
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気にするタイミングが、
人とはえらくずれているのが、
この人の長所でもあり、短所でもあるわけで。
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「予定あったら、昨日の夜に断ってます、」
「んふふ、そ？ありがと、」
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だけど、
6歳も年下の私に、
下手に威張ったりもせず、
同じ目線で話してくれる彼が、
私は結構、好きだったり、するわけで。
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街の小さな、喫茶店。
大野さんの叔父さんが、はじめたお店。
店の権利書は、多分その叔父さん名義だけど、
実質切り盛りしてるのは、彼がメイン。
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「カップ磨いといてー、」
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やっぱり、
間延びした声でそう言われて、
伸ばした髪の毛を高い位置でまとめた後、
白いカップを手にとって、磨く。
.
8時に開店する、喫茶店。
朝の、通勤ラッシュを狙ってのこと。
.
扉につけられた、
ベルが音を立てる。
.
いらっしゃいませ、
と声を出して、何気なく目線をやったその先には、
昨日、バーで会った、彼がいたからで。
.
大きな瞳をきょとん、と揺らして
ぱちぱち、と何度か瞬きをした後、
形の良い唇が、私の名前を紡ぎ出した。
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