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カラン、と
グラスの中の氷が音を立てる。
.
バイトが終わった土曜日の夜中、
こんなところで油を売ってるなんて
親が知ったら、どう思うだろう。
.
…もっとも、心配してくれる親なんて、
ここにはいないけれど。
.
ハタチになって、
それからお酒を飲むようになった。
煙草は嫌いだけど、こうやって、一人で甘いお酒を飲む時間が好きだ。
.
「…隣、いいかな？」
.
突然掛けられた声に、
驚いたわけじゃない。
.
そんな類の誘いは、
断り慣れてるし、
″連れがいるんです″って笑えば、
粗方の人が諦めて他所へ行く。
.
今日も、同じようにそう言おうと
顔を上げたら、
2週間前に会った、
″経済の貴公子″がいた。
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「あ…」
「こんばんは、」
.
高そうなスーツとネクタイは、
育ちの良さそうな彼に似合っていて。
.
私の返事も貰うまで、座るつもりはないらしい。
立ったまま、私の方をジッと見つめていた。
.
「あ…どうぞ、」
「ありがとう、」
.
にっこり、と優しい笑顔で笑った彼は、
随分大人なはずなのに、
少年のように無邪気で。
.
「真栄城さん、だったよね？」
.
それでいて、頭も良い。
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