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「何になるの？苗字、」
「食いつくとこそこかよ(笑)」
.
仁はそういって笑った後、
何も戸惑うことなく、その候補である苗字を教えてくれた。
.
「タニムラ、」
「たにむら？」
「そ、谷に村、でタニムラ」
「ふつー…」
.
谷村仁。
…パンチ全然ないじゃん。
.
「や、絶対、″田埜″の方がいいって、」
「だよな？」
「うん、」
「断ろうかな、まじで、」
.
断ることはできない、と既にしっかり分かっているような口ぶりだった。
そこらへんにある、世間話のようにサラリと話すけど、
それを、仁が受け入れられていないことも。
.
「引き取りたいんだって、俺のこと、」
「へー…そう、」
「なにせ、有名私立大学通っちゃってるからな、俺」
「単位危ういけどね、」
「そのために勉強してんだろうが(笑)！」
.
あのね、私。
嫌いなんだ、そういう、話。
だから笑うの。
何も知らない、子供みたいに。
.
「タニムラ、は誰よ？」
「新しい相手、」
「…なに、財閥の跡取りにでもする気？」
「そうなったら、お前雇ってやるから安心しろ(笑)」
「逆にできないわ(笑)！」
.
仁が、言うの。
″勝手だよな、″って。
″大人は勝手だよな、子供は振り回されてばっかりだ″って。
.
だから、私は言うの。
″一生信じないもんね、″って。
″私も仁も、一生大人なんて信用できないもんね″って。
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