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「Aちゃーん、」
「はーい、」
.
夕方の４時ごろ。
ランチタイムの最後のお客さんが帰ったあと、
茶色いエプロン姿の大野さんが、
おいでおいで、をして私を呼んだ。
.
「きゅーけーしようかー」
.
ここから、
１時間くらいは、暇な時間。
.
OPENの壁掛けを
CLOSEにする。
大野さん曰く、
「準備中」という名の「休憩時間」なのだそう。
.
しっかりした企業の傘下にあるお店だと、
こうやって融通が利かないけど、
大野さんのお店は、自由で楽しい。
今の時間は、私と大野さんだけ。
.
昨日売れ残ってしまったお菓子が、
小さなお皿に乗って出てくる。
私がコーヒーが苦手なことを知ってる大野さんは、
自分はランチタイムで挽いた残りの豆のコーヒーを飲むのに、
私のためだけに紅茶を淹れてくれる。
.
お店の一番端の席に
二人で向かい合って座る。
.
うふふ、と大野さんが笑う。
なんですか？って聞いたら、
私の頭を指さしながら目じりを下げた。
.
「かあいいね、それ」
「どれ？」
「今日のおだんご、うふふ、かあい」
.
どうやら、長い髪の毛をくるくる、とまとめて
お団子にしている私のそれを指しているらしい。
.
「後ろから見ると抜群にかあいいよねー、」
.
って、なんだか失礼。
今は、大野さんと私、向かい合って座ってるのに。
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