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「…Aちゃんは、大人じゃないよ、」
「え…？」
「大人じゃない。だけど、子供でもない。」
「……」
「俺が、守ってあげたい。」
「………」
「それじゃ、だめ？」
.
大人な彼が、
一人の人間の私に、「好き」だと言う。
私のことを、「守りたい」と言う。
.
そして私は。
この人に、″守られたい″と思う。
.
「櫻井、さ…」
「うん、」
「わたし…は、」
「うん、」
.
私は、きっと。
一生、″幸せ″を信じることは、ないだろう。
たとえ、相手が、誰だとしても。
どこか、深いところで、結局疑って信じない。
.
大人だな、と思うのは。
こういう時でさえも、
答えを急かしたりせず、ゆっくりと頷いて
私の言葉を聞いてくれるところだ。
.
「わたし、は。」
「うん、」
「一人で…立ちたい。大人に、なりたい。」
「…うん、」
「で、も。」
「ん、」
.
″守られたい。″
.
運命も、愛も、幸せも、信じてない。
心の奥のどこかで、疑ってる。
.
「…お願い、します、」
.
小さくつぶやいた言葉に、櫻井さんが、優しく笑う。
「ありがとう、」と低い声で、そう言う。
.
運命も、愛も、幸せも、心のどこかで疑って信じてない。
だけど、それが欲しい、とも、思う。
.
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