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二宮さんは、ショーケースの中の
シュークリームを数個買って、お店を出ていった。
.
仁には、じゃぁな、って言って。
私には、それじゃぁ、って言って。
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「…誰、あの人？」
「バイト先の先輩、」
「へぇ…、いくつ？」
「36？だったかな、たしか、」
「社員さん？」
「じゃねーの？……え、なに、気に入った？」
.
ノートとにらめっこしていた仁が、
ハッ、としたように顔を上げてこちらを見る。
.
「なわけない、」
「だよなー、16上なのはAには荷が重いよなー、」
「じゃなくて、」
「？」
「そんなすぐに好きになれない、」
「それでいてしかも？」
「……ちょっと上すぎ、」
.
望み通りの答えをもらったようで、
仁が満足げに笑う。
.
でも、36歳なら。
…櫻井さんと、同じ年だ。
.
「っふ(笑)んな顔しなくても、大人は子どもを相手にしねーよ、」
「わかってるよ、」
.
すっかり冷えてしまった、紅茶を口に含む。
そうだ。
私は、子供だ。
.
どんなに一人で立とうとしたって、
所詮は子どもだ。
.
でも、私が今子供なら、大人からの愛が欲しい。
それが手に入らないから、私は大人だ。
子供に、愛を与えなければならない、大人だ。
.
だけど、私には分からない。
愛がどんなものなのか、分からない。
…だから、仁にも。
分からない。
.
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