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『2つめ。』
『俺との、いちばん辛かったことを思い出す。』
────
『おい伊野尾待てよ!!!』
『うるさいっついてくんじゃねえ!!!!』
夜中、部屋から飛び出して行った伊野尾を追い掛けても払われる手。
伊野尾が風呂に入っている途中に掛かってきた、共演者の女優からの電話。
今度スタッフを含めてご飯に行くことになっていたことの、変更をわざわざ伝えてくれた、ただそれだけだったんだけど。
『....だれから』
いつの間にか風呂から上がっていた伊野尾が、じっと俺を見つめてそう問う姿に、何故か俺は答えを誤魔化してしまった。
『共演者の人、。』
『....へぇ、共演者の。随分と仲良さそうに話すのね、
........女と』
『は、....』
タオルを頭にかけて、ぺた、ぺた、と早足でこちらに近づいてくる。
俺は、後ずさりすら出来なくて。
『いつもなら名前言うくせに。こういう時だけ"共演者の人"だなんて言い方。やましいことでもあんのかよ』
パシッ、とスマホを取りあげられ、女優の名前を見られる。
伊野尾は、普段こんなことしないし、怒らないから俺は怒りとかよりも、驚いていて。
『この人ね。へぇ、わざわざ電話してくるなんて、あっちにも気があるんじゃない?よかったね』
『あっちにも、ってなんだよ、俺は別に、』
『じゃあ誤魔化すんじゃねえよ』
冷たくそう一言言い放って、風呂上がりなのに、コートを1枚羽織った姿で部屋を出ていってしまった。
俺は、よく理解ができなくて一瞬フリーズしてしまってから、
『っ、』
すぐに部屋を飛び出して伊野尾を追いかけた。
──── やっと掴んだ腕は振り払わせずに、こちらを向かせたのに、
『いつもいつも不安で仕方がないんだよ!!それなのに薮が自分から俺のこと、っ、不安にさせないでよ....!!!』
ぐしゃぐしゃになった泣き顔で、そう怒鳴られたら、いくら強く掴んだ手でも、力は緩んでしまう。
スマホのカメラを向け、東京タワーを撮る。
あの日、走って俺の元を去っていく伊野尾の先に見えたモノと同じ。
伊野尾はきっとロケ中だったはず。
休憩の時にでも、気づいてくれればいいのだけれど。
どんよりと曇った空は、俺の気持ちをそのまま表したようだった。
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mapii(プロフ) - ななこさん» ななこさんありがとうございます♪感情移入してもらえるお話がかけて満足です(*^^*)とても切ないお話になってしまいました...。続篇ありますので、よければ覗いて見てくださいね (2018年6月17日 22時) (レス) id: bd8e1618ab (このIDを非表示/違反報告)
ななこ(プロフ) - カクシゴト、カクサレゴト切なすぎます〜〜(;_;)特に光さんが……いのちゃん守りたかっただけのに…何でこうなってしまったんだ…ていう気持ちになりました。光さんに感情移入してしまいました。 (2018年6月13日 17時) (レス) id: 3aa19a7d29 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - いつの間にかファンになっていました、いつも楽しく読ませていただいてます!更新されたせかいでいちばんなのですが、誰の曲を元に作った話なのですか?とてもキュンとしました!これからも楽しませてください! (2018年5月6日 0時) (レス) id: f1b28b9ed0 (このIDを非表示/違反報告)
mapii(プロフ) - 白米プリンスさん» 白米プリンスさん、いつもありがとうございます(´▽`*)素敵ですよね、感謝です...。一度駆け落ちって使ってみたくて、こうなりました(´>∀<`)ゝこれからもよろしくお願いします^^* (2018年4月7日 11時) (レス) id: bd8e1618ab (このIDを非表示/違反報告)
白米プリンス(プロフ) - 待ってました(^^)mapii様の短編集…!タイトルもとても素敵ですね(*^^*)駆け落ち…良い響きです笑全てを失ってでも雄也君が欲しい慧ちゃんが好きです…! (2018年4月6日 15時) (レス) id: 8c7dfe77a3 (このIDを非表示/違反報告)
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