ネバーランドが滅びた日

・ ページ15

.






思い出してしまった気持ちを抑えながら、進んでいく撮影。


ペアは高木で、｢伊野尾くん黒髪久しぶりだよね｣て、そこでも伊野尾の話題。
向こうで○○たちとキャッキャしてる伊野尾を優しい目で見つめて、そう言った。


｢よく似合ってる。ね、薮くん｣


｢うん、....似合ってる｣



少し背の低い高木が俺の顔を覗き込み、口角を上げた。
そういえば、高木もまた少し髪色が落ち着いた気がする。


｢気づいた？｣


｢え、｣


｢俺も黒くしたんだよ、この間より｣


｢あぁ、..｣


やっぱり。
....なんで、このタイミングだった？
舞台のため？
でも、どうして、


｢昨日、伊野尾くんと美容院行ってさぁ、一緒に染めてもらったんだよね｣


｢...へえ｣


そういう、こと。

戻そうとは思ってた、なんて。
所詮、仲良しこよしの高木に流されて、つられて、染めたのか。
どうせこの雑誌のインタビューとかで、
『高木とお揃いにしたんです』とか言うんだろうな。
だって、伊野尾だもんな。


｢うわ、顔こわ、薮くん｣


｢は、｣


｢安心してよ、伊野尾くん自分の意思だから。まぁ少し迷ってたのを押したのは俺だけどさ｣


｢別に俺は、｣


『薮さん高木さん顔こっちお願いしますー！』




そうカメラマンさんに声を掛けられてしまい、会話は中断。

途中、『ほらアイドルスマイル！』と高木に言われてしまい、なんとなくぎこちない笑顔。


伊野尾の意思での、黒髪。

大きく売れたきっかけである茶髪キノコを崩すなんて、どんな意思？



俺の頭の中はハテナしかたない。

それに、高木がその背を押したって、


ほんと、...いつの間にどんだけ仲良くなってんだっけ、こいつらは。





撮影を終え、高木と2人でのインタビューも終える。

楽屋に戻ろうとした時、先に終わったはずの伊野尾の頭がひょこりと出口のドアから覗いた。

高木待ちか、なんて。



ぽん、と高木の肩を叩いて、その場を早く去ろうとする。



ほんと、髪色ひとつで、こんな。




｢やぶ、....、｣



俺が呼ばれたい、なんて、そんなことを思ってしまって、


｢やぶー、｣



今まで感じないようにしてた自分勝手な嫉妬心が、丸出しじゃないか。




｢おい、薮、｣





ぐいっと後ろに引っ張られる感覚。
それと、可愛くない少しドスの効いた低い声。




え、と振り返ると、難しい顔をした伊野尾が、俺を見上げていた。






.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す