7 ページ28
.
「A・スクローアですわ」
「突然の呼び出しに応じていただき感謝する」
顔を上げると綺麗な金色の髪にレッドジャスパーのような瞳...
そしてただならぬ威圧感。
軍事国家の長にふさわしいお方ですこと
「そこの者とワルツを一曲お願いしてもよろしいか？」
「かしこまりました」
疲れた表情を隠しきれていない白い軍服を着た男性が手を差し伸べてきた。
手を取り姿勢を正すと曲が始まった。
……前のご令嬢たちはよくつまづくフリなんてできましたね
なんて思うくらい男性の足取りが覚束無い。
大丈夫かしら、と心配していた矢先 足を踏まれた。
「！ごめっ」
「シーッ、ダンス中に声を荒げてはいけませんわ」
謝ろうとしてきたので手に少しだけ力を入れ、静止をかけてから小声で注意する。
というか、ステップがズレてまた足を踏まれかねない……
「声をかけますので左手を私の頭上付近まで上げてください」
頷いてくれたので、少ししてから小さく声をかけ、ターンをしてからステップを伝える。
「ﾜﾝ･ﾂｰｰ･ｽﾘ...
もうすぐ曲が終わりますし、このステップだけでいきましょう」
「ありがとう」
始めよりも軽い足取りで、表情も柔らかくなった。
うんうん、ダンスは笑顔が基本ですよ
「楽しい時間をありがとうございました」
「こちらこそ。
足は大丈夫？」
「ええ、ご心配には及びませんわ」
無事に終わりお辞儀をしたら、足の心配をしてくれた。
ステップが違ったおかげで足をひねることは無かったので問題ない。
「戻ってもよろしいでしょうか？」
「あ、ああ...」
「では、失礼いたします」
総統様に声をかけたら驚かれたけれど、気にせず頭を下げて扉に向かう。
視界の端にミルクティーのようなお色が見えたのは気の所為だと言い聞かせながら、一礼して部屋を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふたみや遥
| 作成日時：2021年3月20日 17時
