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「A様、お食事をお持ちしました」
「入っていいわ」
「失礼いたします」
この国...というかこの城でメイドを勤めている、カドリ。
一人一人に専属でつけてくれるのだからご立派である。
「今日もお手紙ですか？」
「ええ、内容が浮かばなくって」
実は昨日から悩んでいる。
やはり毎回お涙ちょうだい文を書くのは難しい。
「あの、今日のご予定は……」
食器を片付けながら聞いてくるカドリ。
最近そわそわしている彼女。
これは、聞いてあげた方がいいのかしら...？
「ここのところ同じ質問ばかりね」
「申し訳ございません……」
「先に食器を片付けてらっしゃい。
手が空いてからでいいから紅茶を用意して。
種類はなんでもいいわ」
「はい！かしこまりました！」
元気に返事をされ、少し驚いてしまった。
一体なんなの...？
嬉々として出ていった扉を呆然と見るしかなかった。
「実は、A様が何も言いつけてくれないので暇なのです」
話し方は気にしなくていいと伝えてから紅茶を飲み始めて早二杯目。
彼女はやっと口を開いた。
「暇ならいいじゃない。
好きなことしてなさいな」
「ここにいるメイド達は、お嬢様たちから言い渡される仕事以外なにも割り当てられていないのです」
……え、じゃあ城には別でメイドがいるってこと？
軍事国家の割には、身の回りにもお金を割いてるのね……
「他の専属メイドたちから、暇でうらやましい、とか、使えないから呆れられてる、とか色々言われるようになってしまって……。
何か気を悪くさせたのなら謝ります！
使えないと思われていて、この生活にご不便が生じているなら他の者と代わります！
ですので、はっきりとお申し付けください……」
……自室にいるだけでこんな事になる？
知らなかったとはいえ、カドリには嫌な思いをさせてたみたいね
「貴女に非があるわけじゃないし、不便なこともないわ。
ただ自室で静かに過ごしていたいだけよ」
「そうなのですね……」
「むしろ貴女の仕事内容を把握していなくてごめんなさいね」
「えっ！？A様が謝られることでは無いです！」
聞いてしまった以上この問題をどうにかしないと、悠々自適生活にしこりを感じてしまう。
とりあえず今日はこのまま夕食までいつも通りだけど
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作者名：ふたみや遥
| 作成日時：2021年3月20日 17時
