ストライク【Ｃ５１】

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「あー…なんか今日みんな打たへんな」


奏の言う通り、野球のルールを知らない私にも
分かるくらいカープは調子が悪い。

そんな中で、カープが２点を返して球場がどっと湧いた。


『あ、あれ野間さん！？』

「ほんまや。代走やな」


え、野間さんってああ見えて足速いんや…


７回表、５−２。

カープが守備の時に、誠也くんの背中を見てふと思った。

…誠也くんの背中ってこんなに大きかったっけ。

離れてるけど、何故か大きく見える。
久しぶりに見たからそう見えるのかどうなのかはよく分からないけど、

誠也くんが逞しくて頼もしい事には変わりない。



＊



試合はそのままの点差で進んで行った。

９回裏、５−２。
ランナー満塁の大チャンス。

ここで、打席に立ったのは


『誠也くん、』


でも、２アウト。
確実に逆転するならホームラン…

誠也くんの応援歌がさっきよりも大きく聞こえる。
それだけみんなが誠也くんの事を期待してるって事だよね…

心の中で、祈るしかない。


「ホームランやったら最高やな、」

『うん…』


ピッチャーが投げた何球目かのボールが、
誠也くんのバットに当たった。


『えっ、』


そしてボールは、見えなくなるまで高く上がって


「A、ホームランやで！！」


どんどん速度を増していくボールと共に、
周りの歓声も大きくなる。

そして、そのままスタンドに入って
また歓声が大きくなる。


「今日のヒーロー、鈴木誠也やん！」


良かったな！と、興奮した様子の奏が言ってきたけど、
まだ状況が飲み込めていない。

ほんまに、ホームラン打つなんて…
やっぱり誠也くんは凄い、凄すぎる…

逆転満塁ホームランを打った誠也くんは、
ホームに戻ると、待ち構えていた選手たちに水をかけられていた。


そしてその後のヒーローインタビューは奏の言った通り、誠也くんが出てきた。

誠也くんが「最高でーす！」と言うたびに
球場が盛り上がって、嬉しそうな誠也くんをスクリーン越しにぼーっと眺めていた。


やっぱり、住む世界が違いすぎる。
あんなに凄い人が、私の事なんか好きになるはずない…



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