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「ピコ、こっちこいやッ。」
彼は落下防止のために張られている柵から飛び出して手を伸ばしていた。
最初はジ殺でもしようとしているのかと思ったが、よく見ると彼は柵の後ろ側にいて今でも落ちそうになっている猫を助けようとしているのが分かった。
ピコ、、、。
彼がつけた名前なのか。
彼はだいぶあの猫に愛着を持っているのが見てわかる。
私は彼の方まで足を進めた。
何故屋上の鍵が開いていたのか。
何故彼はここにいるのか。
そんなことは考えず、ただ彼の方へ進んだ。
「くッ、、、よし!届いた、、、あっ。」
彼に近づいている最中、彼が伸ばしていた手が猫に届いたのが見えた。
その瞬間、彼はバランスを崩し落ちそうになった。
私は急いで足を動かし、咄嗟に彼の腰に手を伸ばしぎゅっと掴み後ろに体重をかけた。
「うわ!」
『ぎゃ!』
私は勢いよく後ろに体重をかけたあまり、バランスを崩し、勢いよく後ろに倒れこんだ。
咄嗟に目をつぶり、衝撃を少しでもなくそうと頭に手を回そうとしたが、時すでに遅く。
私は勢いよく頭を地面にぶつけた。
その瞬間、上から重い何かに押された。
痛い。
私は少し涙目になりながらも目を開けると、そこには彼の顔が至近距離にあった。
彼と目が合った。
彼は咄嗟に私から距離を取った。
私も起き上がろうとするが、その瞬間頭が割れるぐらいの激痛が襲った。
『痛った!』
突然に痛みに驚き大きな声で叫んでしまった。
彼は私に近づき、手を伸ばしてきた。
「、、、大丈夫ですか。」
私は彼の手を取り、ゆっくりと立った。
彼の頭から足までをよく見た。
よかったあんまり怪我はなさそう。
そう思っていると彼はハッとした後周りをきょろきょろし始めた。
その瞬間、私の後ろからニャーと声が聞こえた。
振り返るとあの猫がこっちを見ていた。
「ピコ!よかった、無事やったんやな。」
彼は猫のもとに行き猫をそっと持ち、ぎゅっと抱きしめた。
すると猫は彼の手から逃げ出して私の足に近づきニャーと鳴きだした。
「ピコ、、、?」
彼は不思議そうに猫を見つめていた。
その瞬間、突然視界がぐらぐらと揺れた。
まるで世界が歪んだかのように。
彼の顔も、猫もよく見えない。
バランスが保てなくなり私は横に倒れた。
彼は咄嗟に私に手を伸ばしているのが分かった。
「A!?」
最後に聞こえたのは彼が私の名前を叫んでいる声だった。
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作者名：黄色ピン | 作成日時：2024年3月19日 20時
