暗く湿気た地下室で ページ39
男は直感的に感じた。それは手を出してはいけない依頼だったのだと。
口の中が鉄の味で広がり思わず溜まった唾液が血液かわからないなにかを吐き出した。
「さて、もう3日経った」
ただ、ジッと男の眼の前に座る金髪の眼鏡の男は淡々と感情を含まない声でそう告げた。感情を含んでいない声だったが、男には目の前の男が怒りに満ちているのがよくわかった
金に眩んで手を出すもんじゃない組織だった。男はただそう思った。
「お前が全て自白すればすぐに終わる」
「人生が？」
「それはお前次第だ」
俺次第で変わる俺の人生ってなんやねん、と男は笑った。俺次第じゃない。俺はこの目の前の男に人生を鷲掴みされている。決して逃げられない。俺に選択肢を与えているようで与えていない。
「吐くか死ぬかまず選べ」
「わかった、わかった」
これ以上黙っていてもメリットがない。吐けば生かされるかもしれない。それは幼い頃から裏世界に足を突っ込んでいた自分の感が告げていた。俺はまだ使えると判断されている気がするからそれに賭けてみる。依頼主の情報を絶対に吐かない殺し屋なんているわけない。なぜなら所詮俺たち殺し屋と依頼主の信頼性なんて金で繋がれているだけだからだ。
「依頼主は」
「本名かは知らねえが、俺にはブルーダーと名乗った」
「外の奴か」
「ぱっと見の見た目はな。半々ってところだ」
「年齢は」
「まだガキだ」
「ガキ？」
「ああ。ちょうど俺が殺そうとしたあの女の子と同じくらいだ」
「……」
「そういやあお前と同じ綺麗で憎ったらしい金髪だったよ」
「他には」
「日本語は流暢に話してたが、仲間にはさらに流暢なドイツ語で話してた」
「他には」
「組織のでかさは分からねえがそんなにはでかくねえだろうな」
「根拠は」
「殺し屋の感」
「他には」
「どうしても殺してほしい奴がいると言われた」
「それがあの女か」
「そうだ」
自分はすっかり演じていた関西弁も取れていて、男にただ淡々と情報を吐いていた。
一通り話し切った後、男はしばらく黙り込み、そして立ち上がった。
「ご苦労だった」
「んで、俺をどうする？」
「どうされたい？」
「そりゃ釈放だねえ」
「そうか、ならそうしよう」
男は俺に近寄り髪の毛を掴み上げた。ぶちぶちと勢いよく掴まれたせいで抜けていく音が聞こえる。思わず痛みに顔が歪んだ。
「仕事してもらうがな」
間近で見た男の目はどす黒くくすんでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1564人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪姫(プロフ) - 小説面白くて大好きです。投稿頑張って下さい。9ページの夢主さんの「はい、わかりました。」というセリフが「はい、わかりまし。」となっています。確認お願いします。 (2020年6月11日 23時) (
レス) id: ef862af7e8 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - この作品のコネシマがとても大好きです。これからも陰ながら応援しております。 (2020年2月3日 16時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - ……続きをぉぉぉぉぉぉぉぉおおお(´；ω；｀)そして好きです← (2020年1月6日 6時) (レス) id: 4a50da7845 (このIDを非表示/違反報告)
ウル(プロフ) - 大好きです。(((唐突 (2019年11月21日 3時) (レス) id: 87e6a0aeb1 (このIDを非表示/違反報告)
無能 菜月チャンネル(プロフ) - きたぁ。。 (2019年10月8日 23時) (レス) id: ac1a9cdc00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
