○ ページ45
「私、鬱先輩と、…また、お友達からやり直せたらって…そう思ってて…」
言葉は最後まで言えなかった。鬱先輩の顔が歪んだからだ。そんな顔されたら、友達なんて言えなくなってしまう。
「友達かあ」
「…」
「残酷なこと言うね」
「…………」
「でも、俺もそう言うことしてきたから何とも言えんわ」
鬱先輩はそういって、自分の横をぽんぽんと叩いた。
「ちょっと隙あらば自語り、ってやつしてもいい？」
＊＊＊
自分の中で一番記憶に残っている昔の出来事は、母の記憶だった。
俺には父親の記憶はない。それもそのはず、父親がどんなやつかもわからないらしいのだ。
母親は無理矢理行為をされ、その時にできた子供が俺だった。
「愛されてなかったと思うな」
こう言っては何だが、母親は俺を寧ろ毛嫌いしていたと思う。忌々しい記憶が、俺を見れば甦る状況なのだ。そりゃ、嫌いにもなる。高校生になった今だからこそ、俺は母親の境遇に同情もできた。
俺が覚えている記憶で、母親は俺を殴っていたと思う。痛かった。頬が赤く腫れるのは、とても痛いのだ。でも俺は母親が大好きだった。唯一の家族、唯一の血の繋がり。俺を愛してくれなくても、家族として生きてくれていたらそれでよかった
「Aちゃんには全くピンとこんと思うねんけどな、母親は売られたんよ」
売ったのは祖母だ。今考えても酷い家族構成だろうな。
出産がきっかけで心を病んだ母を邪魔者扱いして、その時日本にいた売人に売った。実際に日本でこんなことが起こってるのか？と思われがちだが、ようはヤクザみたいな奴らに連れていかれたってわけ。
泣き叫んで母親を引き止めたけど、母親はもう何もかも諦めた目で俺すら瞳に映さなかった。
「俺は祖母に育てられた」
健康体な俺をしっかりこの歳まで育ててくれたのは祖母だった。感謝はしているが、だからと言って好きかと言われたらそうではない。俺を育てる余力があるなら、母親をなぜ売ったんだ。売らなくても、そんな事しなくても、母親は正気に戻るかもしれなかった。でも捨てた。俺の母さんを捨てた。
「んで飛躍するねんけど」
「……」
「おれ、ばあちゃんを殺してんよ」
「え」
今でも忘れない。俺が中学2年の頃だった。
多感な時期に俺は祖母と喧嘩した。些細な事だ。少し夜遊びをして、帰りが遅くなった。怒られた。腹が立った。だから軽い気持ちで突き飛ばした。
「突き飛ばしたら、打ち所が悪かったみたいで。そのまま動かんくなった」
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花奈 - 更新再開されてとっても嬉しいです！！！！！今後も楽しみにしてますTT (2021年6月21日 18時) (
レス) id: b9fb555fa9 (このIDを非表示/違反報告)
海猫 - 全部一気に見ました！神作品ありがとうございます!これからの投稿も楽しみにしてますね! (2021年3月21日 13時) (レス) id: ecd79149f7 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - とても面白いです！！誤字を指摘させていただくのですが『スイスとオーストラリア』ではなく『スイスとオーストリア』ではないでしょうか。違ったらごめんなさい。応援しています！！ (2021年3月20日 21時) (レス) id: 148d6a46f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 全部一気に読んでしまいました…。本当に最高です！もう語彙力がなくて私のこの感情を作者様に伝えることができないのが本当に申し訳ないと思うほどこの作品は素晴らしすぎます…無料で読んでよかったんですかこれ…。本当にありがとうございました…感無量です… (2020年12月21日 16時) (レス) id: 1e1f442bdf (このIDを非表示/違反報告)
よこはま(プロフ) - ムニエルさん» ムニエルさんありがとうございます！全員実る世界線書くつもりなので最後までよろしくお願いします！ (2020年7月8日 19時) (レス) id: 51d00fe6bf (このIDを非表示/違反報告)
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