選ぶ権利 ページ41
「俺が一番嫌なのは、Aが泣くことやで」
「……泣くこと…」
「そう。ちっさい頃から泣き虫なお前が泣くのが一番嫌やねん。だからAを泣かした鬱は許さんし、コネシマも泣かすなら許さん」
「…」
「俺やったら、好きな子には笑ってて欲しいと思うもん」
「……ロボロくん…」
「アッ今のは俺がAを好きって意味ちゃうで！？好きやけど！」
「…ふふ、わかってる」
ロボロくんなりに、私を慰めようと、元気付けようとしてくれているのだろう。彼は頭が良いが、聡明ではない。だからこそ、一つ一つの言葉をしっかり考えて発言する。彼の言葉には重みがある。
「コネシマの件…鬱の件もひっくるめて、ホンマに嫌なら、俺からいうたってもええよ」
「……」
「…」
「…嫌とかじゃ、ない」
「…うん」
「……嫌じゃないけど、私みたいな人間に告白を断られたってなったら、二人のプライドが…」
「A」
「それは、お前を好きになってくれたあの二人に失礼やろ」
「……ごめん」
「んーん、怒ってへんよ。昔っから、お前は自分のこと下に見過ぎや」
そう言って頭を撫でた。
「人間に優劣なんてないねん。たしかにAは何かできひんことがあるかもしれんけど、俺ができひんことが出来たりする。だからまずそうやって、自分を下に見るのはやめや」
「……うん…がんばる…」
「ん、ちょっとずつ治していけばええ。んで、プライド云々やけど、プライド云々言うような奴らやったら、俺が殴ったる」
「…」
「あの二人は、ちゃんとAが好きなんやと思うで。そこだけみてあげて」
「そこをみて、それでも無理やねやったらそれでええねん。恋愛ってそう言うもんや」
「……」
「Aがこれからも友達でいたいって言うならそれも言うたらええ。もちろん、Aがそういう選択をするなら、相手にも選ぶ権利があるんやから、なに言われても文句は言うたらあかん」
「……うん…」
コネシマくんも、鬱先輩も、私がちゃんと、「好き」なんだ。
…だから、しっかりと答えを出さないと、ダメなんだ。
「なんもきっちりした言葉で返したらええなんてことない。Aの思ってること言うたらええねん、な？」
「………うん、ありがとう」
「ええよ」
ぽろぽろ流れてた涙をロボロくんが指ですくってくれた。
「ん、やっぱ笑ってる方がええよ」
温かいその手は、兄じゃないのに、兄を思い出して心が暖かくなった。
○
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花奈 - 更新再開されてとっても嬉しいです！！！！！今後も楽しみにしてますTT (2021年6月21日 18時) (
レス) id: b9fb555fa9 (このIDを非表示/違反報告)
海猫 - 全部一気に見ました！神作品ありがとうございます!これからの投稿も楽しみにしてますね! (2021年3月21日 13時) (レス) id: ecd79149f7 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - とても面白いです！！誤字を指摘させていただくのですが『スイスとオーストラリア』ではなく『スイスとオーストリア』ではないでしょうか。違ったらごめんなさい。応援しています！！ (2021年3月20日 21時) (レス) id: 148d6a46f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 全部一気に読んでしまいました…。本当に最高です！もう語彙力がなくて私のこの感情を作者様に伝えることができないのが本当に申し訳ないと思うほどこの作品は素晴らしすぎます…無料で読んでよかったんですかこれ…。本当にありがとうございました…感無量です… (2020年12月21日 16時) (レス) id: 1e1f442bdf (このIDを非表示/違反報告)
よこはま(プロフ) - ムニエルさん» ムニエルさんありがとうございます！全員実る世界線書くつもりなので最後までよろしくお願いします！ (2020年7月8日 19時) (レス) id: 51d00fe6bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
