オフの日の予兆 ページ19
「あ、ひとらんさんだ」
「げっ」
寒空の下、「ネギ買ってこい」というトントンの横暴さに振り回され、私はマフラーを巻き、手袋を装備して、モコモコのダウンコートを着込み外に出発した。嫌だと何回も訴えたが人権が無いため否定権がなかった。
そしたらスーパーで随分とラフな格好のひとらんさんと遭遇した。
しかも相手が私を認知した瞬間に本当に嫌そうな顔をしていたので割とショックだ。
「げっ、はなく無いですか。流石に泣いちゃう」
「……俺は今日、休みだから…」
「あ、そうなんですね。お買い物ですか？」
「……君に関係ないでしょ」
いや、その通りだけど言い方よ。
悲しくなってきたな…嫌われている…？とほほ。
でもまあ、そこまで嫌がっているのに付き纏うほどバカではない。「そうですね、ではこれで〜」と頭を一回下げて私は野菜コーナーに向かった。
ひとらんさんに何か嫌われるようなことをしたのかな。…いや、こんな小娘の護衛に付くことすら嫌なのに、休みの日に遭遇したらプライベートもクソもないのかもしれない。
嫌われてない、うん、大丈夫大丈夫…。そんなポジティブシンキングな精神で自分を落ち着けて、ネギを手にとりレジに向かった。
何も起こることなくレジで精算を終えて、一品しかないため袋詰めも直ぐに終わった。
そうしてスーパーの外に出て帰路に着く。
「…ん？」
すると、後ろからやたらとうるさいエンジン音が聞こえてきた。なんだ？と思って振り向いた瞬間体が大きく動いて、お尻に強い衝撃を受けた。
「ッドェァ！！」
突然すぎて変な声出た。
自分が状況を理解するのにしばし時間を要したのは仕方ないことだろう。気づけばうるさいほど鳴り響いていたエンジン音は遠のいていった。
「いてて…」
それと同時に、自分は何かに包まれていると言うことに気付いた。
恐る恐る顔を挙げれば、ひとらんさんが遠のいていったエンジン音の方を鋭い目付きで睨み付けていた。
「ひ、ひとらんさん？」
「……本格的になってきたな」
「え？なにが…」
「送る。どうせ誰かついてるだろうけど、こんなに堂々とやられちゃソイツも直ぐに動けない」
「え？え？」
本当に理解が追いつかないけど、ひとらんさんは体勢を起こして自身についた砂を払う。私も立って砂を払った。
「オフなのでは…」
「目の前で対象が死にかけてたらオフもクソもないでしょ」
休日出勤で給与もらうから、とのことだった。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花奈 - 更新再開されてとっても嬉しいです！！！！！今後も楽しみにしてますTT (2021年6月21日 18時) (
レス) id: b9fb555fa9 (このIDを非表示/違反報告)
海猫 - 全部一気に見ました！神作品ありがとうございます!これからの投稿も楽しみにしてますね! (2021年3月21日 13時) (レス) id: ecd79149f7 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - とても面白いです！！誤字を指摘させていただくのですが『スイスとオーストラリア』ではなく『スイスとオーストリア』ではないでしょうか。違ったらごめんなさい。応援しています！！ (2021年3月20日 21時) (レス) id: 148d6a46f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 全部一気に読んでしまいました…。本当に最高です！もう語彙力がなくて私のこの感情を作者様に伝えることができないのが本当に申し訳ないと思うほどこの作品は素晴らしすぎます…無料で読んでよかったんですかこれ…。本当にありがとうございました…感無量です… (2020年12月21日 16時) (レス) id: 1e1f442bdf (このIDを非表示/違反報告)
よこはま(プロフ) - ムニエルさん» ムニエルさんありがとうございます！全員実る世界線書くつもりなので最後までよろしくお願いします！ (2020年7月8日 19時) (レス) id: 51d00fe6bf (このIDを非表示/違反報告)
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