○ ページ16
「…そ、そんなの、信じられるわけありません」
「…信じられへん？」
「…はい。だって、鬱先輩は、何人もの女の人とお付き合いしてて…」
私もこの目で何度か見ている。入学式からあの一件の間で、鬱先輩がいつも違う女の子の肩を抱き、校内を歩く姿を。
私は、本人達がそれでいいなら別にいいと思う。私が口を挟む様な事じゃないと思っているが、私個人としては、女性関係にだらしない人にそんなこと言われても信じられない。
……まあ、あの一件以来、鬱先輩はどうやら女遊びをやめた、というのは、耳にしていたのだけれど。
「それもわかってる。だから、自分で自分の尻拭いさせてほしい」
「…尻拭い？」
「俺が君をどれだけ好きか、っていう覚悟を見てて」
そう言って鬱先輩は私から手を離し、自身のポケットから携帯を取り出した。私は頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、その行動を何も言わずに見ていたのだが、突然その携帯を教室の床に叩きつけた。
「え」
私が言葉を挟む隙間なんてない。
グシャ！
バリ、バリン！
バンバンバンバンバン！！！
こんな感じで、自分の携帯を問答無用で足踏みし、バリバリに割る鬱先輩。
あまりの衝撃的行動に、呆気に取られてしまった私が我に帰るのはそれから3分ほど経った時。
「…ちょ！鬱先輩！？」
思わず止めに入り、鬱先輩の腕を掴む。
「な、なな、なななにやってんですかアンタはァ！」
足元にある携帯ちゃんは、悲壮感が漂っている様にも思える。凄い音を立てて壊れていったその携帯ちゃんにゆっくり触れても、当然画面がつくことはない。
「200人」
「…え？」
「女の子の連絡先が入ってた」
「……」
「でも、Aちゃんに本気ってわかってほしいから、これが一番手っ取り早いかなって」
携帯に触れる私に目線を合わせるべく、腰を曲げてそう呟く鬱先輩の目は、さっきよりも本気が見て取れた。
「Aちゃん、好きや」
こんなことされて、否定できる人がいるのなら、是非私のところに来てほしいものだ、と思った。
「…引いた？」
「…かなり…」
「でも、それだけ本気やし、保健室のことも反省してる」
「……それは…」
「こんなんで許されるなんて思わんけど、…自分の誠意の為に、やっただけやから」
「……」
「…別に付き合ってほしいって、今すぐ言わん」
「……」
「…でも、一個だけ」
「…？」
「……交換ノート、続けたいねん」
「……えっと…」
「お願い」
「………」
断れるはずがなかった
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花奈 - 更新再開されてとっても嬉しいです！！！！！今後も楽しみにしてますTT (2021年6月21日 18時) (
レス) id: b9fb555fa9 (このIDを非表示/違反報告)
海猫 - 全部一気に見ました！神作品ありがとうございます!これからの投稿も楽しみにしてますね! (2021年3月21日 13時) (レス) id: ecd79149f7 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - とても面白いです！！誤字を指摘させていただくのですが『スイスとオーストラリア』ではなく『スイスとオーストリア』ではないでしょうか。違ったらごめんなさい。応援しています！！ (2021年3月20日 21時) (レス) id: 148d6a46f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 全部一気に読んでしまいました…。本当に最高です！もう語彙力がなくて私のこの感情を作者様に伝えることができないのが本当に申し訳ないと思うほどこの作品は素晴らしすぎます…無料で読んでよかったんですかこれ…。本当にありがとうございました…感無量です… (2020年12月21日 16時) (レス) id: 1e1f442bdf (このIDを非表示/違反報告)
よこはま(プロフ) - ムニエルさん» ムニエルさんありがとうございます！全員実る世界線書くつもりなので最後までよろしくお願いします！ (2020年7月8日 19時) (レス) id: 51d00fe6bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
