「笑顔も涙も見つめてきたよ」�� ページ27
お題サイト「確かに恋だった」様のお題からタイトルをお借りしております(書き手)
無言で差し出された花束がかさり、と乾いた音を立てる。
艶やかなオレンジ色の花弁を揺らすキンセンカを中心に、小ぶりだが可愛らしい黄色や水色の花達と白いカスミソウを所々に挿した花束。
それをそっと受け取り、丁寧に腕に抱いた巳代は花束に視線を落としたまま静かに「助かった」と零した。
「…別に。Aの為だし」
感情の乗らない低い声。
ちらりと視線を向ければ、花束を用意してくれた岬が常と変わらない風を装いながらも虚ろな目をしている。
「囲君、海月さん」
穏やかな声。
だけど哀傷を帯びた声に振り向く。
岬と同じように、普段通りを装った灯が微笑んでいる。
いつ崩壊してもおかしくない、罅割れた笑みだ。
「(そんなにも......いつも通りで居る事が大事なのか？)」
再び、花束へと視線を落とす。
目を惹き付けるオレンジは、Aの誕生花だ。
Aが血蝕解放を、一部だが制御下に置けたと報告した際に、ついでとばかりに教えてくれた。
「(あの子は、Aは)」
胸の内で続けようとした言葉に巳代は首を振り、唇を引き結んだ。
その先はまだ、巳代自身も受け入れられてないから。
「...行きましょう」
「ええ。囲君はどうしますか？」
「......辞めとく」
「分かりました。花束の手配、ありがとうございます」
灯の言葉に何も返さず、少しだけ背中を丸めて岬は縁側から屋敷の中へと上がっていく。
脱ぎ捨てられた外行き用の靴が岬の心情を現しているようで、巳代も灯も何かを言葉にするなんて事はせずに、それぞれ靴先に足を入れた。
頬を撫でる風は湿っていて、もうじき雨が降りそうだ。
まるで、泣けない誰かの代わりに涙を落とすかのように。
「...いつか、こんな日が来てしまうのではと」
さくりさくりと芝生を踏み締める二人分の足音の隙間に、灯が静かに言葉を漏らす。
後ろを歩く灯の表情は見えないが容易に想像が付く。
どうせ後悔に
「恐れているだけではいけなかったのに...」
巳代と同じで。
「無茶するなって、何度も言ったんだ」
数分もかからずに辿り着いた、敷地内の奥に新たに置かれた白い石。
なんの装飾も施されていないただの石の前に巳代は膝を着き、大切に
「言ったのに.....この馬鹿、馬鹿A」
この石の下に冷たくなったAの体を埋めたのは、一週間前の事だった。
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える(プロフ) - まろ。さん» コメントありがとうございます。岬さんのターンを現在、頑張って書いておりますのでもう少々お待ち下さい:( ;´꒳`;) 羅刹生徒との戯れ(殺伐)ならありそうですね…。読んでくださってありがとうございます(ㅅ´꒳` ) (10月11日 23時) (
レス) id: 1ac12544bb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - マカロニさん» お待たせ致しました(◍ ´꒳` ◍) (10月11日 23時) (レス) id: 1ac12544bb (このIDを非表示/違反報告)
まろ。 - めっちゃ面白いです。囲や羅刹生徒との戯れも見てみたいです！！ (10月9日 18時) (レス) @page32 id: 8f5e220a7e (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ - 続き待ってました！ (10月2日 16時) (レス) id: f15cb9037a (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ - 最高です👍 (9月23日 23時) (レス) @page31 id: f15cb9037a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2023年1月21日 1時
