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零【親友side】 ページ9

3月18日のお昼休み。Aは学校に居なかった。



紗耶によれば、昨日も部活に行かなかったらしい。

Aは風邪かな〜、なんて話を紗耶としながら職員室に足を運ぶ。



四限目の後、担任に紗耶と2人で来るように、と言われたからだった。

というか、さっきからなんか気持ちが悪い。緊張しすぎるとなる、あの腹痛みたいな感じだった。

憂鬱な、地味な痛みがグルグルと身体の中で渦巻く。









「Aは、不明の病で命を落とした。」









私の感じ取ったモヤモヤは、見事命中した。



担任に紗耶と並んで座らされ、面白い事を聞かされた。

Aは昨日、気絶して救急車に運ばれ、今朝息を引き取ったと。



一瞬、身体が固まった。そんな事があるか。

昨日、Aは確かに私達の隣にいた。



彼女は健康体だ。



もうAの手は刀を握っていないのに、彼女が急に死ぬ訳、、無いじゃないか。









「・・・A。」



私は薄々気付いていたんだと思う。



入学式の日に、筆箱を忘れた私に天使のような笑顔でシャーペンを渡してくれたA。

一瞬で彼女だと分かった。



最初は全く違和感なんてなかった。

昔と変わらず優しくて、しっかり者で、ちょっとドジっ子な所もあったりした。

彼女は新しい人生を歩もうとしているんだな、と思った。

今度は同じ人間として、仲良くなれた。

前世も綺麗さっぱり忘れているようで、鬼殺への執念が消えた彼女の年相応な態度が見れた。



そんな無邪気な彼女は時透さんと一緒にいた時のAに似ているな、と思ったり。



でもやっぱり、Aはたまに寂しそうな目をする事があった。



でもそんなのは瞬きをすれば消えていて、私は毎回見間違えだ、と思い込んでいた。

いや、ただただ私がそう思いたかっただけなんだろう。



けれどAの魂は、鬼殺隊の元へ、時透さんの元へ帰りたがっていた。

そんなAの葛藤を私は1年間見て見ぬ振りをしていたんだ。









Aは今頃、時透さんといる筈だ。



Aは不明の病で亡くなったのではない。



これは彼女の魂が選んだ事だ。



私の横で泣き崩れる紗耶の背中を摩る。

ここで笑みを零してしまったら不審がられてしまうので、心の中でAを祝福した。









幸せになってね。



A。

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ねぷ(プロフ) - むこぴさん» 有難うございます!!感謝感激雨嵐です! (2021年3月30日 13時) (レス) id: 2734a4564e (このIDを非表示/違反報告)
むこぴ(プロフ) - 素敵なお話で、凄く感動しました! (2021年3月30日 10時) (レス) id: 436e6e11b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねぷ | 作成日時:2021年3月29日 23時

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