愛と恋の壁【熱波夏彦】 (ページ32)

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静かに線香花火を俺たちは楽しんだ

緑の細い糸の紐先にまん丸としたオレンジの火が灯してる

「……初めて」

そう言うと、目を輝かせて笑った

「落ちなかった。いつも落ちるのに」

「よかったな」

「はい」

頭を撫でると、驚愕な表情を浮かべた

「何かありました？」

「さぁな」

目をじっと見つめられた、そうですか、と素っ気なく言われた

しゃがんだまま、線香花火を見てAは言った

「来年はリュウジさんも一緒に」

「あぁ」

問題が解決した後から思うようになった

これからはAが不安に思うことは何でも取り除いてやりたい

リュウジと何かあったら今まで通り

Aの味方になってやりたい

「…俺さ」

「はい？」

「悪い。何でもない」

言ってはいけない言葉

あの人に言えなかった言葉を言いそうになった

腕時計を確認して立ち上がった

「帰る」

「また今度」

挨拶交わうと思った矢先に言われた

「私、吉良さんやヒートさんよりも誰よりもネッパーさんが信頼できます。もちろんリュウジさんよりも」

「…」

「リュウジさんは好きです。ネッパーさんも好きですけど意味が違います」

俺にとって大きな意味を持つ言葉をAは無表情で言った