ジョンウ ページ28
ジョンウ視点
一生懸命走っていたら、気付けなかったみたいだ。
舞台袖でリハーサルの準備をしていると、急に喉の奥が詰まり始め、身体もうまく動かなくなって、隣にいたマクがぎょっとした顔で僕の名前を呼んだ。
そうしているとポロポロと涙が流れ始める。
メイクさんに怒られちゃうから泣くのはダメだと思えば思うほど、どうしても胸が苦しくなる一方で、止めようにも止められない。
マクの慌てた声に気付き、自分の周りをヒョン達やルーカスも囲んでくるけど、余計に混乱して息が出来なくなってしまう。
とうとうステージへの階段に座り込むと、タオルやペットボトルなんかがいくつも僕の元へやってきた。
だけど、それにお礼を言えることすら今はむずかしい。
「……テヨンイヒョン！A！」
隣に座って僕の背中を擦っていたドヨンイヒョンが声を上げたから、僕もゆっくりと顔を上げた。
ステージの裏は暗くて、二人が前にいるのかどうかわからなかった。
いやこれは、涙で滲んでいるからそう見えるだけなんだ。
こんな姿をこの人たちに見られたら呆れられるかな。それとも怒られるかな。
怒られるのは怖いけど、それはしょうがない事なんだろう。
どんどん心の内側が削がれるように、気持ちが目減りしていくのが自分でもよく解ってしまう。
そうなると両親に叱られた小さい頃の事を思い出してしまい、足元に顔を向けて、大きく息を吸い込もうとするけど、途中で蓋をしたようにつかえてしまった。
やっぱり改善の余地がない。
ただ、ヒョンやヌナの声はまだ耳に届いてくる。
「どこ行ってたの？」「衣装さんのところ」「私のチェーンが外れちゃって」と話していたその会話が一旦止まり、今度は早い足音が近づいてきた。
「ジョンウ、どうしたの？ドヨンさんにいじめられたの？」
階段の、僕が座った数段下にしゃがみ込んで、Aヌナが僕を見上げるようにそう言った。
表情は怒ったようにも、困ったようにも見えない。
普通の、真面目そうないつもの顔だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 996人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せの(プロフ) - ありがとうございます！楽しんでいただけたようで嬉しいです。またお暇なときにでも読んでいただければと思います！ (2020年8月7日 9時) (
レス) id: 8c6ff02c0b (このIDを非表示/違反報告)
も(プロフ) - せのさん〜！沢山更新お疲れ様です！せのさんペンとしては突然の大量供給に飛び上がりました(≧∀≦)ジェミンとの回、私の予想では悠太くんも連れ込んで一緒にお泊りかなと思ってたので意外な展開にワクワクしました！！2人で映画みて寝落ちしたのも可愛かったです(^-^) (2020年8月3日 0時) (レス) id: 7e1d3bac26 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - つきさん» ありがとうございます！気楽に書いたものをあげているだけなので、そこまで褒められると恐縮なのですがとても嬉しいです。またお暇なときにでも読みに来ていただけたらと思います！感想とても嬉しく、ありがとうございました。 (2020年7月28日 10時) (レス) id: 8c6ff02c0b (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - 特に授賞式の章が好きです。いつも自己投影せず第三者の気分で紅一点を眺めているのですが、メンバーと同様紅一点の人間性に内実が詰まっていて、読むたび感動します。これだけ詰まったお話を書くのはきっと大変かと存じますが、応援しております。 (2020年7月24日 10時) (レス) id: 1c49931e2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せの
| 作成日時：2020年7月22日 10時
