【名探偵コナン】風見さんちの妹さん３【降谷零】

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──江戸川コナンが黒江田賢吾と出会う少し前に遡る。

東都湾岸警察署 2F 大会議室
『海洋公園“警察官”殺人事件』特別捜査本部

現在この事件を担当する捜査一課長や管理官は姿を見せていない。他で発生した帳場にでも出向いているのだろう。
大規模な事件の発生が少なければ常駐する管理官も多いが、多いと各特捜を点々とする場合がある。

その捜査一課長と管理官の一時的な代わりなのか、何故だか分からないが警視庁刑事部の参事官が前方の雛壇に座っている。

やや遅れて入室してきた参事官は遅れた理由として、湾岸署到着時に署長への挨拶が出来なかった故に先程署長室へ出向いて挨拶してきた、ということだった。

別に遅れた理由が何にしろ問い質す者はいない。絶対的な階級制度。雲の上の存在のような階級を持つ者に、問い質す勇気を持っているやつなんかいるわけない。

何もかも折り目正しい参事官の姿を眺めながら刑事は人差し指で机をコンコンと叩いていた。

二つ空けた隣の席に座る所轄刑事が何か物言いたげに小さく口を開いたが、刑事の胸元のMPDの文字が刻まれている通行証がそれを黙らせていた。

刑事の通行証には『臥田(ふしだ)』と書かれている。見る限りでは40代後半、少々やつれた中年男。くたびれたスーツには不釣り合いな、見るからに高価そうな腕時計が右腕に輝いている。

臥田は至る所に視線を巡らせた。
ホワイトボードや出入口付近の長机に積まれていた資料をみるにどうやら事件はどん詰まり“らしい”。

賑わう休日の海浜公園で白昼堂々に警察官が刺殺された。目撃者は多数居るはずと踏んでいたのに誰一人として犯人を見たという者は出なかった“ようだ”。

付近をうろついていた不審な人物の情報も出なかった“らしい”のでこの特捜は未解決に片足を入れかけている。

「改めて事件の内容をまとめます。被害者は荒木田明信、56歳、東都杉並区在住、“元警視庁公安部の刑事”です」

机を小突いていた指が止まる。

荒木田明信
公安刑事

やはりそうか。

臥田は在りし日の荒木田を思い浮かべる。

『お前はどうしたい。
国民を守りたいか？
それとも、“国”を守りたいか？』

荒木田さん、俺は選んだよ。
俺が守りたいものっつーのはさぁ。

「──新たな情報が入りました。前回鑑識から報告が上がっていた胃袋から発見された、被害者が最後に飲み込んだであろう紙片ですが復元作業が終了したようです」

臥田が物思いに耽っている最中にも当然参事官の話は続いていた。資料や受けた報告を再度まとめて話しているとばかり思っていたがここに来て新たな情報とは。

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