【鬼滅の刃】小心者-産屋敷耀哉- (ページ3)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:7,869 hit

１ページ3

神職の一族だって？

ふざけないで頂きたい。

｢家内安全なんて言ったらバカ売れだよこの御守り！！そんなことあるわけないのになあ｣

御参拝に来て下さる人々を騙して変な御守りを売り、利益を独占するお金のことしか頭にない父。

｢ふふふ、そうねあなた。今日も奮発しちゃいましょうよ。｣

お金に目がくらんでいるのかそれを可笑しいとも思わない母。

そしてそれを聞いて喜ぶ頭のおかしい十一人の姉さん達。

もうここまで来ると、あれ、実は私が頭おかしいのかな？そうなのかな？とでも思ってしまって仕方がない。

うちは汚職一家である。

いや、本当は由緒正しい家柄だった。
それを証明する家系図だってちゃんとある。
うちは代々名門の神職の者で、爺ちゃんが神主だった時まではちゃんとしてたんだ。

爺ちゃんが死んで父が神主になってからはどうだ。
荒れ果てた境内、濁った池、そこに住む鯉は息苦しそうだ。もう二匹は"こんな場所に生きるくらいなら死んだ方がマシだ！"とでも言わんばかりに死んでいった。

いや違うんだ。違くないんだけれど、こんなに広い場所だ。私が一人で掃除をしても手が回らない。猫の手も借りたいとはまさにこのこと。
池の水だって一人で換えたり掃除したりするのは並大抵の事じゃない。
無駄に広い境内を掃除したって他に洗濯、ご飯の支度…とにかく一日中掃除の時間に当てられるわけないんだから。

母は家事をしない。父は加持をしない。
十一人の姉さん達も毎日のように厚いお化粧をして街へ行って"今日の男はあんまりね"なんて言って遊び呆けて帰ってくる。

正直言ってしまえば私の人生はソーバッド(so bad)だ。
(この前姉さんたちが話していた横文字というものを使ってみた。)

それでも

"A、どんな時も笑顔を絶やさず諦めず行えば必ず仏様がお前を導いてくださる"

それでも辛くはなかった。
この爺ちゃんの言葉を胸に毎日頑張っていた。

たまにある時間を大好きな読書に費やすことができた。
書庫に腐るほど本がある。神職に関する本やその他もろもろだ。手当り次第読み漁るのが大好きであった。

『はあ幸せ……』

もう時止まれよ……

もうすぐ夕餉の支度しなきゃ…

一度反抗して夕餉を作らなかった時には憤慨され、家族は私をよく思わなくなった。
それ以来反抗していない。

これ以上嫌われたくないからさ。