. ページ35
Your side
河井さんの胸に両手をついてそれを力の限りに
押そうとした瞬間、
後ろのドアが壊れるんじゃないか
ってくらいの勢いで開け放たれた。
すぐに後ろを振り返りたかったのに、
顔が河井さんの胸に
押しつけられているせいでそれもできなくて、
「あんたらアホか！」
この状況とは不釣り合いの怒声とともに、頭に鈍い痛みが走る。
「……っ！」
あまりにも遠慮のない一撃に、
言葉すら発せずにその痛みをやり過ごす。
河井さんに抱きしめられているせいで、頭を抱えることすらできない。
久しぶりの痛み。
子供の頃、悪いことをすると、
お母さんにこうやって拳骨を
落とされていたこと思い出す。
耳のすぐそばで河井さんの
小さなうめき声も聞こえたから、
きっと同じ痛みが河井さんにも振り落とされたんだと思うけど、
この声って……。
「アンタらの問題やから
アンタ達で解決出来るやろうと思って、
ドアの向こうで聞き耳立ててたんよ。
どうしてこういう流れになるのよ」
息巻く茜さんに、
「茜は黙っとるって約束やったやん…。」
河井さんがため息混じりに指摘するけど
「黙れヘタレ」と一蹴されて終わる。
ひとつ息をついた河井さんが
腕の力を緩めた隙に、私はその中から抜け出した。
そして真後ろに立っていた茜さんのほうへ
向き直って見上げる。
どうして茜さんがここにいるのか聞こうとしたのだ。
でもそれを後悔するくらいに、怒った茜さんが私たちを見下ろしていた。
とてもじゃないけど、疑問を口にできる状況じゃない
「AちゃんもAなんよ！！
ゆずるのことを好きなのに、付き合えへんとか
もう恋はせえへんとか、アホやん！？』
私のいろいろな苦悩の末の結論も、
"バカ"のひと言で片づけられてしまう。
でも、それに言い返すことができないのは、
怒りながらも茜さんの瞳に涙が滲んでいたからだ。
「遥香ちゃんに負い目があるんだか、
コンプレックスがあるんだか知らへんけど、
目の前に好きな人がおんのに
手を伸ばさないなんてほんまに馬鹿よ！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梨乃(プロフ) - Ayaeさん» 更新遅れてすみませんでした！気になって頂けて嬉しいです（ ; ; ）！これからもよろしくお願いします！！！ (2020年9月11日 14時) (
レス) id: d64356b558 (このIDを非表示/違反報告)
Ayae(プロフ) - 続きがとても気になります！！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: 5d1752397c (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ますみさん» ありがとうございます（ ; ; ）以前も作品を褒めて頂いて、そのお言葉で頑張れています！本当に嬉しいです！！ありがとうございます（ ; ; ） (2020年8月28日 17時) (レス) id: d64356b558 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 続編おめでとうございます。ほんまにこの作品大好きです。切なくあってキュンキュンしたりそんな作品です。色々なめんでお姉ちゃんとどうしても比べてしまって。続きが楽しみでしょうがないです。 (2020年8月26日 12時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リ
| 作成日時：2020年8月26日 12時
