. ページ27
Your side
私が矢継ぎ早に言葉を発し終えるのを待ってから
河井さんは
「Aちゃん」
とたしなめるように私を呼ぶ。
さっきは子供河井さんだったくせに、
今は大人河井さんだ。
「もう、放っておいてください」
そっとしておいて。
もう私のことなんか気にしないで、
二人で勝手にしあわせになっちゃってよ。
私はとうとう自分の膝に顔をうずめた。
「Aちゃん、
ひとりで勝手に終わりにするなって」
「 意味がわかりません」
くぐもった声で返事をする。
「あの日はね」
「聞きたくありません！」
無理に話を進めようとする河井さんの言葉を遮って、
叫ぶようにそう言った瞬間、
ガンッと派手な音が部屋中に響いて、
肩がビクリと跳ねる。
恐る恐る顔を少し上げて
自分の前髪と腕の隙間から様子を窺うと
河井さんの拳がローテーブルに打ち付けられていた。
どうしてそこまで
怒る必要があるのか理解できないし
さっきの声に驚いていた私は
声を発することも、微かに動くこともできなかった。
河井さんが声もなく立ち上がる。
その一挙一動にびくついてしまう。
そのまま部屋を出ていくのかと思った
彼はそうせずに
ふたりの間にあったローテーブルを
部屋の隅まで運んだ。
そして、体育座りの私を
両足で囲むようにして真正面に座る
私の顔にその大きな手を添えて、
有無を言わさずに上げた
否応なしに視線が合ってしまって
それを外そうとキョロキョロすると、
それすらさせまいとばかりに顔をもっと近づけてくる。
「お願いやから、話をさせてほしいねん。」
「い、嫌ですっ」
じわり、また涙が浮かぶ。
今まで泣けなかったのが嘘みたいに、
バカみたいに涙が溢れる。
嗚咽が漏れないように
唇をかみしめる私を見て
河井さんは
眉根を下げて切なそうに顔を歪めていた。
ポツリ呟いたのは、
お姉ちゃんと同じ謝罪の言葉だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梨乃(プロフ) - Ayaeさん» 更新遅れてすみませんでした！気になって頂けて嬉しいです（ ; ; ）！これからもよろしくお願いします！！！ (2020年9月11日 14時) (
レス) id: d64356b558 (このIDを非表示/違反報告)
Ayae(プロフ) - 続きがとても気になります！！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: 5d1752397c (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ますみさん» ありがとうございます（ ; ; ）以前も作品を褒めて頂いて、そのお言葉で頑張れています！本当に嬉しいです！！ありがとうございます（ ; ; ） (2020年8月28日 17時) (レス) id: d64356b558 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 続編おめでとうございます。ほんまにこの作品大好きです。切なくあってキュンキュンしたりそんな作品です。色々なめんでお姉ちゃんとどうしても比べてしまって。続きが楽しみでしょうがないです。 (2020年8月26日 12時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リ
| 作成日時：2020年8月26日 12時
