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いまいましげに愚痴を垂れた光が隣の裕翔を見あげると、彼も何故か同じように複雑な形相で二人の背中を睨んでいる。
「……どうした? 裕翔」
声をかけるとハッと我に返って、いつものように爽やかに破顔してくれるが。
「あぁ、ごめん光くん。なんでもないって」
「でも、なんでもないって顔じゃなかったけど?」
裕翔が足を止めてうつむいた。
「あのさ…薮くんって、いい人?」
「え? なんで? いい奴だよ。俺にだけは、いつもあんな態度だけど」
「そう…ヒカには優しくしてくれるかな?」
あぁ、そうか。
裕翔は優しいから、幼馴染みのヒカのことを気にしているんだな。
「うん、そこは心配ないって。薮は基本的には紳士的だし誰にでも優しいし頼りになる奴だよ。それにさ、あんなにデレてる薮の顔って、あんまり見ないから。よっぽどヒカが可愛いんじゃない?」
「ふぅん…そっか。そうなんだ。ちょっと安心したよ。ならいいんだ。ごめんね、変なこと訊いて」
「ううん。ぜんぜん」
裕翔は、薮とヒカの事が気になるらしい。
「さぁ光くん、駅ナカの写真展はあっちから入るみたい。行こう」
「うん」
駅の構内に入ると、通勤ラッシュの時間だから恐ろしく人が多くて、隣り合って歩いているとすぐに離れそうになる。
背が高くて体格のいい裕翔のうしろを歩いていても、あっという間に距離が開いて見えなくなる。
「え? どこ? ゆ…裕翔?」
人混みの中で光が立ち尽くすと、
「ほら、こっちだよ光くん」
目の前に現れた裕翔は、誰もがハッとするほどハンサムな顔で優しく声をかけてくれた。
なんだか胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
「ごめんな裕翔。俺、どうも人混みは苦手で。人と歩いていてても、はぐれそうになる」
苦笑して謝罪すると、裕翔が手を差し出してくれる。
「行こう。ほら、光くん」
彼の大きな手を取るのを、光は少しだけ躊躇した。
「でも……男同士で手を繋ぐのって、変じゃない?」
「えぇ? あははは、俺そんなの気にしないけど? それに、こんなに混雑してたら、別に変じゃないって」
なにごとも大らかに捉えている裕翔が、うらやましく思えた。
そうだよな? うん。そうだ。
光は素直に差し出された手を取った。
ガタイのいい裕翔に手を引かれていると、不思議なほど歩きやすい。
身体で裂くように人を左右に分けてくれるから、光はただそのうしろをついて歩いた。
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時