12 ページ48
.
なんだか胸がいっぱいになって、目頭が熱くなってくる。
視界が滲んで揺れた。
今度は俺の番だ。
光はそう思った。
ちゃんと今までの想いを伝えたかった。
「ごめんな薮、今日はおまえを心配させて。こんな無茶までさせて」
「光が無事だったら、そんなことはどうでもいい」
「ありがとう…俺、日が暮れていく崖の下で…もう薮に会えなくなるかもって思うと本当に怖かった。だから…後悔したくない」
薮は期待に満ちた目をして光を見つめる。
瞬きをする、わずか一瞬でも惜しいと言わんばかりに。
「薮に、ちゃんと伝えたいことがあるんだ」
「…うん」
「俺な、薮が好きだ」
「知ってるよ」
二人の視線が熱く絡みあえば、光は胸がいっぱいになって声がうわずってしまう。
目尻から大粒の涙が転がり落ちた。
「小学生の頃から薮とは一緒だったけど、いつからだろう? わかんないけど、もうずっと長いこと薮を想ってた」
泣きながら笑みを作り、袖口で涙をこする光を抱き寄せると、薮は細い身体を折れるほど抱きしめた。
「光、それに気づかないでごめんな。でも俺自身に自覚はなかったけれど、俺も光を好きだったんだ。だからさ、もうおまえを離さないから」
「うん。うん、嬉しい…」
冬が長ければ長いほど、その年の桜は綺麗に咲くという。
ようやく二人の気持ちがひとつの絆となった。
「光…」
掠れた声で名前を呼ばれ、背中にまわった腕が強く絡まってくると、切なさが胸に押し寄せた。
これ以上ないほど深く抱き合えば、まるで散らばっていたパズルのピースが合うように、心地よく身体が馴染む。
光は濡れた瞳のままに、薮の整った顔を見あげた。
切なさに息苦しさを覚えて、たまらずに濡れた瞳を閉じると、それを待っていたかのように唇がしっとりと重なった。
まるで迎え入れるように光が唇を開くと、長い舌が大胆に忍び込んでくる。
迎え撃つようにこちらからも舌を伸ばして絡めながら、光は艶のある黒髪に両手を深く差し込んだ。
「やぶ…やぶぅ」
意外にも柔らかい感触を感じながら、薮にキスをされているという事実に酔いしれる。
嬉しくて嬉しくて、くちづけながら自然と頬が甘くゆるんでしまう。
「なんだ? どうかしたか?」
少し戸惑うような声が与えられ、慌てて言い訳する。
「違うんだ。ごめん。なんか嬉しくて。薮にキスされてるなんて嘘みたいで、すごく嬉しいんだ」
.
249人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時