10 二人きりのロッジの夜 ページ46
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「あぁ。外のデッキには薪も積んであったから、おそらく猟師が使っているんだと思う。吹雪さえよけられて火をおこせれば一晩はしのげる」
「よかった、助かった。でも、道はわかるのか?」
「方角はわかる、でも暗くなったら終わりだから急ごう。おまえ、歩けるか?」
「うん。少し足が痛いけど、歩ける」
手をさしのべた薮に支えられた一歩踏み出したが、やっぱり捻った足首が痛かった。
「っ…っ」
「大丈夫か?」
「落ちる時にひねったみたい。たいしたことはないけど…歩くと少しだけ痛いから、ゆっくり歩いて?」
申し訳なさそうにお願いすると、薮はいきなり背中を向けて前屈みになった。
「乗れよ。ほら」
どうやら、おんぶしてくれるらしい。
「え? ええ…? いや。でも俺、結構重いって。無理だよ薮……それにボードもあるんだし」
「心配すんなって。おまえ一人とボードくらい運べるよ。ほら」
「…ありがと」
薮の背中は思いの外あたたかくて、そして安心できた。
二人が目的のロッジに着いた時には、すっかり日が落ちてあたりは真っ暗になっていた。
暖炉で火が燃えている。
薮が薪を組んで火をおこしてくれて、加減を見ながら薪をくべてくれていた。
パチパチという小気味いい音に、木の香り。
幸いなことに、地元の猟師が使っているらしいこのロッジには、暖炉と少しの食料があった。
「やぶぅ、もう寒くないよ」
毛の長いログの上に立て膝で座った光の身体には、大きな毛布が掛けられている。
すっかり冷えていた身体は、暖炉と毛布のお陰でずいぶん温かくなった。
「そりゃよかった」
火の側は不思議と安心できる。
あったかさだけでなく、オレンジ色の炎とこの音がそうさせる気がして、光は赤々と燃える暖炉の火を見ていた。
少し前、ロッジに入った途端に携帯が鳴ったことで、この場所は電波が入ることを知って二人が安堵したことは言うまでもなかった。
相手は裕翔で、心配して何度もかけてくれていたらしい。
さっき光と薮が助けた小学生からすでに知らせを受けていたようで、彼らからも電話があった。
ただ、夜の雪山での救助は二次被害の恐れがあるため、救助は明日になるそうだ。
つい今しがたヒカからも電話があって、無茶なことして心配させたことを光は謝った。
それにしても…
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時