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ポロポロと涙が頬を滑って落ちる。
「なぁ、待ってよ。俺、ごーかんなんてしてないからな!」
ヒカはようやく裕翔の目を見た。
「さっきのがごーかんじゃないって言うなら、なんだよ。俺、腕を……縛られて……無理やりされたのに」
語尾にいくほど、声に勢いがなくなっていく。
悔しいし、哀しいからだ。
「ヒカ、違うって!」
裕翔が髪をガシガシと掻いている。
その仕草が昔のままで、こんな時でもドキッとすることにヒカは頭を抱えた。
切なさが胸に押し寄せてくる。
自分は今も裕翔が好きなんだろうか。
きっとそうだ。
光と裕翔が徐々に仲良くなっていくのが、ずっと気になって仕方なかった。
裕翔を失った喪失感を二度と味わいたくなくて、逃げていたんだ。
だから他の誰かに夢中になって、裕翔を忘れたかったのに。
結局逃げたのは自分も同じだから、裕翔を責められないかもしれない。
「なぁヒカ、なんでごーかんだなんて思うんだよ」
「そんなの…俺の意思を無視して、無理やりされたからに決まってるだろ!」
この行為の理由なんて、ひと言も聞いてないし。
「違うって。だって俺…っ、ヒカのことを薮くんに取られるかと思ったら、我慢できなかったんだ。ごめんなさい」
「……ぇ?」
ヒカは大きな瞳を、さらに見開いた。
さっきのは、気持ちが伴わない行為じゃなかったの?
裕翔が……俺を、好き?
「馬鹿、もうワケわかんない。なんだよもぉ」
なんで、そんな言葉が今なんだよ!
「待ってよヒカ、ワケわかんないとか言うなって! なぁ、今さらなしにはできないからな! 俺、もう聞いちまったんだから、もう逃がさないよ」
「え…なんの話?」
もうワケがわからない。
頭の中がグチャグチャで、ちゃんと整理できないし。
「ヒカはさ、あの夜のプールで俺がキスしたあと、俺との関係を前に進めていいって考えたんだよな? なら、今度こそ前に進めようよ。俺たち」
ちょっと待ってよ。
ヒカは何度も瞬きをする。
今度こそはっきりさせてやる。
「なぁ…俺、まだ裕翔の気持ちを聞いてないんだけど」
今度は裕翔が目を見開く番だった。
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時