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「おまえ…なに言ってんのかわかってる? ゆうとは俺から逃げたくせに! もう話は終わったんだ。俺は帰るから、離せよ!」
強固に掴まれた手を振り解き、床に置いたカバンを急いで拾って逃げようとしたが、今度は長い腕が背中にまわって動きを封じられる。
「無理だよ。ヒカは帰れない」
「は? なに…馬鹿なこと言ってんだよ。離せって」
飄々とした裕翔に空恐ろしさを感じたが、己の中に生まれた恐怖心を悟られるのはヒカのプライドが許さなかった。
「ヒカ、もう終電ないよ。だからさ、昔みたいに泊まっていけばいい」
チラリと壁の時計に視線を走らせると、すでに午前様で。
「えっ…?」
気づかなかった。
「今日さ、うちに誰も帰ってこないんだよね」
見おろされる体勢には慣れていない。
それだけでいらだつ。
子供の頃は、俺よりずっとチビだったくせに。
「……いやだって、ゆうと。帰るよ」
「いいじゃん。よく俺のベッドで一緒に寝たでしょう?」
「そんなの……子供の頃の話だろう? いやだよ。俺は帰る…電車がないなら歩いて帰るから」
拘束を逃れようと躍起になっているのに、強靱な手が背中から離れない。
「怖いの?」
核心を突かれて息を飲んだ。
「なにが?」
「なにがって、ふふっ…俺が」
頬が怒りでカッと熱くなる。
「どうしてだよ! なんで俺がゆうとを怖がらなきゃならないんだ」
「俺がヒカよりデカくなったし、それに力も強いから? まぁ、俺が本気で襲ったら、抵抗なんてできないだろうからね。ヒカだって本当はわかってるんでしょう?」
心臓が早鐘のように激しく打っている。
怖いだなんて思いたくないのに、怖い。
ただ怖い。
裕翔が怖い。
「おまえは…そんな馬鹿なこと、しないって知ってる」
もう、精いっぱいの強がりしか吐けない。
裕翔が俺を襲うなんて事、絶対にあり得ないんだから。
「ねぇヒカ。あいにくさぁ、可愛くて良い子だった俺は、もうとっくにいないんだよ。俺はヒカに馬鹿なことしたいし、やらしいことだってしたいって思うよ。今、すごく…ヒカが欲しいよ」
信じられない暴言が鼓膜を震わせると、頭が真っ白になる。
裕翔が……俺を欲しい?!
どういう意味だよ?
俺を抱きたいって事?
単なる薮への対抗心で?
あぁ…そんなの絶対に許せない。
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時